「誰にも負けない努力をする」(京セラフィロソフィー)のとはどのような努力か?感想と考察。



清水直樹
「誰にも負けない努力をする」についてその意味や考察をご紹介していきます。

 

「誰にも負けない努力をする」とは、稲盛和夫氏が作った「京セラフィロソフィー」に掲げられている一文です。本記事では、誰にも負けない努力をするとは具体的にどういうことなのかを見ていきます。

「誰にも負けない努力をする」は京セラフィロソフィーのひとつ

稲盛氏は、京セラフィロソフィーの中で、以下のように書かれています。

より充実した人生を生きていこうとするならば、人一倍努力を払い、仕事に一生懸命打ち込まなければなりません。

自然界に生きている動植物はみな、必死に生きています。我々人間もまた、まじめに、一生懸命に働くということが、生をうけたものとしての最低の務めであろうと思います。

そのためには、まず仕事を好きになることが大切です。好きであればこそ仕事に没頭することができます。またよりよいものを目指そうという気持ちも生まれ、自然に創意工夫をするようになります。

仕事に惚れ込み、夢中になり、人並み以上の努力をする。この誰にも負けない努力がすばらしい結果をもたらしてくれるのです。

 

稲盛氏は、中小零細企業が大企業へと変身を遂げていくただ一つの方法が、「地道な努力」を続けることだ、とおっしゃっています。それだけ努力は大切なことであり、京セラフィロソフィーの「六つの精進」の最初に掲げられています。

稲盛氏は、なぜ努力が大切であると考えたのか?

稲盛氏は28歳の時、京都市の西ノ京原町で京セラを創業しました。スタートしたときには、志を共にする28名の社員がいたと言います。ただ、当然ながら資金がないので、知り合いの会社の倉庫を間借りして仕事をしていたそうです。

町で一番になるだけでも誰にも負けない努力が必要だ

当時から稲盛氏は高い目標を持ち、「西ノ京原町で一番の会社になろう。一番になったら中京区で一番になろう。次は京都一になろう。そして日本一になり、世界一を目指そう」と社員に語り掛けていたそうです。

しかし、当時、西ノ京原町には自動車の整備に使うスパナやレンチをつくっている京都機械工具社がありました。さらに範囲を広げれば、中京区には島津製作所がありました。これらの会社は既に京セラが比較にならないほどの商いを行っていました。そこで、西ノ京原町で一番になるだけでも大変なことだ、と感じ、誰にも負けない努力をしようと志したとされています。夜にそれらの会社の前を通ると、まだ工場が稼働している、わが社も負けてられない、と努力を続けてきたそうです。

努力の人、二宮尊徳から影響を受けた

稲盛氏は、努力の話をする際、二宮尊徳の話を良く引用されています。

二宮尊徳は江戸時代後期の人物で、二宮金次郎像(尊徳の通称)で有名です。二宮尊徳は、貧しい農民から身を立て、最終的には幕臣にまで取り立てられました。二宮尊徳と聞くと、勤勉な人というイメージしか浮かばない人も多いと思いますが、彼はいまでいう事業家と言えます。最初、自分の生家を復興するために小さな努力を積み重ねて成功させます。その実績が世間に知れ渡り、荒れ果てたいくつもの農村を立て直し「農民聖者」と呼ばれました。稲盛氏だけではなく、渋沢栄一、安田善次郎、豊田佐吉、松下幸之助など、明治以降の名だたる事業家に影響を与えたことで知られています。

そんな二宮尊徳が残した言葉に、「積小為大」があります。これは小さいことを積み重ねることで、大きなことを成す、という地道な努力をすることの大切さを説いた言葉です。稲盛氏もこういった二宮尊徳の影響を大いに受けていると思います。

「積小為大」については以下の記事に詳細を解説しています。

積小為大の意味とビジネスでの活用を解説。

 

誰にも負けない努力をすることで何が生まれるのか?

「誰にも負けない努力をする」という言葉は、昨今の風潮とは正反対のイメージもあります。努力をするよりも、努力をしないでいかに成果を上げるか?(儲けるか?)と考えるのがカッコいいとされているようです。また、長時間労働が悪とされていたり、むしろ根を詰めて働くことは創造性を落としてしまう、と考えられがちです。

誰にも負けない努力をすることに意味はあるのか?

そんな中、誰にも負けない努力をすることに何の意味があるのでしょうか?

私個人的には、

  • ムダな努力は要らないが、正しい努力は必要だ
  • 成果を上げている人は漏れなく努力をしている

と考えています。

ただ、睡眠数時間で朝から晩まで畑に出ていたと言われている二宮尊徳の時代と異なり、いまの時代における努力とは、必ずしも長時間、手や足を動かして働くこととは限りません。どちらかというと、”ひとつのことについて考え続けること”が現代流の努力と言えるかもしれません。

誰にも負けない努力をすることで、アイデアや解決策が生まれる

稲盛氏は、潜在意識に入り込むほどの願望を持ち、誰にも負けない努力をすることで、新しいアイデアや問題の解決策が生まれる、という話を良くされています。実際、皆さんも何か一つのことを考え続けると、ふとした時に解決策が生まれたり、ヒントとなる出来事にであったりすることがあるでしょう。そもそも何も考えず、努力をしていない人にはアイデアも解決策も生まれないのです。

 

「誰にも負けない努力」が出来る人が持つ5つの資質

最近では、努力を出来ること自体がひとつの才能であると考えられています。ではどんな人が誰にも負けない努力を出来るのでしょうか。稲盛氏は、そこまで踏み込んだ話をされているわけではありませんが、別の講話の中でヒントになる話がありましたので、それをご紹介したいと思います。

なぜ京都の会社は利益率が高いのか?

日本におけるビジネスの中心と言えば東京ですが、ベンチャー精神の中心は京都であるともいわれています。なぜならば、京都には優れた業績を出している会社が多数あるからです。稲盛氏の京セラもそうですが、他にも

  • 任天堂
  • 村田製作所
  • オムロン
  • ローム
  • 島津製作所
  • 日本電産

等々があります。

あるとき、稲盛氏は京都企業の営業利益率が他の地域の会社と比べても高いことに気が付きます。そして、世界のトップ企業と比べたらどうなのだろう?と思い、米国支社のリーダーに”世界のトップ企業と京都発企業を比べてみてくれ”と依頼しました。

その結果、驚いたことに世界で営業利益率が高いトップ30社くらいの中に、日本企業は5社、そして、その5社のうち4社は京都に本社がある会社だとわかったのです。

営業利益率が高い会社の社長が持つ5つの資質

稲盛氏は、なぜ京都の会社はそんなに優れているのだろう?と思い、それらの会社の創業者が持つ資質を考えてみました。その結果として、以下の5つの点を挙げています。

危機感があること

好業績をあげている会社の創業者は、そもそも業界の門外漢としてスタートしていました。そのため、他の会社に負けないほどの努力をしなければ生き残っていけない、という危機感があったそうです。

程よく欲張り(飢餓感)であること

そして、これは時代背景もあるかもしれませんが、もっと大きな会社を創らなければならないという飢餓感があったこと。



勝気であること

危機感と飢餓感があると、普通の人は気がめいってしまい、逃げ出してしまいます。しかし、京都企業の創業者には、勝気がありました。つまり、負けたくない、という気持ちです。日本電産の永守氏なんかを見ると、まさにそんな感じがしますね。

陽気であること

勝気であると同時に陽気であること。困難に突き当たったとき、”もうだめだ”と止めてしまうのではなく、前向きに努力できることです。

創意工夫があること

元々門外漢であり、素人である分、業界の常識にとらわれない創意工夫がありました。創意工夫は、努力から生まれます。先ほど書いた通り、もっと上手いやり方はないか?何とか解決できないか?ということを考え続けることによって、潜在意識が働き、創意工夫が生まれるのです。

そして最後に、これら5つのことが習い性となり、会社が大きくなっても、危機感や飢餓感を持って前進してきたことが京都企業の優秀さにつながっていると言います。

 

これら5つの資質は、すべて努力につながるものであり、”誰にも負けない努力を出来る人”というのは、これらの資質を持てる人、と言い換えてもいいのではないでしょうか。

 

誰にも負けない努力をするには?

では、私たちが誰にも負けない努力をして、成果を上げるにはどうしたらいいでしょうか?いかにいくつか、私が考えるポイントを挙げてみます。

願望(目的)を持つ

まず、努力の目的がなければ何も始まりません。稲盛氏の場合、まずは町で一番、京都で一番、日本で一番、世界で一番という願望がありました。それが努力をする原動力となったわけです。

この願望には2種類あります。ひとつは、自分のエゴを満たすだけの願望、もうひとつが自利利他円満となる願望です。前者は自分のためだけのものであり、後者は誰かのためのものです。よく言われているように、自分のためだけよりも、誰かのために行うことの方が自分の可能性を発揮できるとされています。自分が何を目指しているのか、どんな願望をかなえたいのかを考えてみてください。

自利利他円満については以下で解説しています。

自利利他(円満)とは?意味からビジネスでの実践まで解説。

 

努力する対象を選ぶ

次に何に対して努力をするのか?です。既に目の前にやるべきことがある人は、こんなことを考える必要もないかもしれません。

実は私自身は、起業した当初、何に対して努力をすればいいのかわからなくなってしまった時期がありました。いまであれば、”これをやればお客様の価値につながるな”とか、”これを続ければ売上は上がるな”という感じで、努力の対象が明確になっています。しかし、起業当初は、”これをやればこうなる”という方程式というか、因果関係がわからなかったのです。なので、やる気もあるし、努力も惜しまない気持ちはあったのですが、”一体なんの努力をすればいいんだろう?”と悩んだ時期があったのです。

もし同じように、何に対して努力をすればいいのかわからない、という人がいれば以下の点を考えてみてください。

品質を磨く

何より、顧客に提供する商品やサービスの品質を磨くことです。つまり、お客様にとってより価値の高い商品やサービスに仕立て上げる、ということです。品質を磨くことには際限がないはずです。

細部を磨く

商品、サービスだけではなく、ビジネスのあらゆる面の細部を磨くことです。たとえば、パンフレットのデザインひとつ、オフィスのデザインひとつ、ウェブサイトの文言ひとつ、これら細部のひとつひとつが、見る人の意識に影響を与えます。先ほどご紹介した積小為大のとおり、細部が積みなさなって大きな成果を生み出すのです。

人間力を磨く

社長をはじめとして、リーダークラスの方は人間力を磨くことに努力を行らないようにすることです。人間力はリーダーシップ能力そのものであり、これにも”これでよし”、という際限はありません。

 

直接の努力と間接の努力

”努力”といえば、幸田露伴の「努力論」が有名です。この本の中には、直接の努力と間接の努力という二つが出てきます。以下に引用してみましょう。

努力は一である。しかしこれを考察すると、自然と二種あるのが分かる。一ツは直接の努力で、他の一ツは間接の努力である。間接の努力は準備の努力で、基礎となり源泉となるものである。直接の努力は当面の努力で、事に当たって奮励努力する時のそれである。人はともすると努力が無効に終わることを訴えて嘆く。しかし、努力は効果の有り無しによって、すべきであるとかすべきでないとかを判断すべきではない。努力ということが人の進んで止むことを知らない人間の本性であるから努力すべきなのである。そして、若干の努力が若干の好結果を生じる事実は、間違いなく存在しているのである。ただ時には努力の結果が良くないこともある。それは努力の方向が悪いからか、それとも間接の努力が欠けていて、直接の努力だけが用いられたためである。無理な願望に努力するのは努力の方向が悪いので、無理ではない願望に努力して、そして好結果が得られないのは、間接の努力が欠けているからであろう。

 

もしかしたら、あなたには努力しても報われなかったという経験があるかも知れません。努力論によれば、それは「間接の努力」を欠いているためだと書いてあります。

自分にとって直接の努力とは何か、間接の努力とは何かを考えてみてください。

 

創意工夫を続ける

努力をするといっても、何も考えずに同じことを繰り返していては、それは単なる単純労働に過ぎません。同じことを繰り返す中でも、もっと上手いやり方はないか、もっと早く出来るやり方はないか?と常に創意工夫をすることが大切です。

これは別名、「改善」と呼ばれますね。「改善」の代名詞的な会社と言えばトヨタですが、同社の豊田章男社長は、改善を続けることで革新につながる、とおっしゃっています。多くの人は、地道な改善ではなく、大きな変化、すなわち革新を求めたがります。しかし本当は、小さな改善を続けることで、時に大きな飛躍につながる革新が生まれる、ということです。

 

時間をかける

私たちの努力はどれくらいで報われるのでしょうか?その答えは当然ながら目指したい目標や目的によるでしょう。しかし多くの場合、私たちが思っているよりも、多くの時間がかかります。”一夜にして成功するには、10年かかる”という言葉もあったりします。

たとえば、アマゾンとアップルの業績推移を見てみましょう。

アマゾンが巨大になったは実は最近

アマゾンの業績推移

いまでこそ、世界最大の小売業であり、IT企業であるアマゾンとして日本人ほとんどが知っている会社になっていますが、創業から10年くらいまでは大した成長をしていません。アマゾンの長期志向の戦略は有名であり、最初は赤字を出しながらも成長に向けた準備の努力を続けていたのです。

 

アップルは20年も地道な努力を続けた

アップルの業績推移

アップルはもっと忍耐強いと言えるかもしれません。見ての通り、創業から20年くらいたった2000年くらいまではほとんど成長していません。たしかにニッチ市場のPC(教育など)としては認識されていましたが、とても成功している会社とは言えませんでした。その間、彼らは様々な製品をリリースしてもうまくいかなかったり、創業者ジョブズを解任したり、と様々な困難が続いていたのです。グラフを見れば、2000代中頃から一気に成長していますが、その前には長年の努力の蓄積があったことがわかります。

 

オリンピック選手はまだラクだ

このように、努力が花開くには長い時間がかかるものなのです。まして、経営者の場合、その努力を一生続ける、という覚悟も必要です。稲盛氏は、講話の中でオリンピック選手はまだラクなものだ、とおっしゃっています。なぜならば、オリンピック選手には、4年後のゴールがあるからです。つまり、ここまで努力をすればいい、という期限があるのです。一方の経営者にはそれがありません。ちょっとでも努力を緩めようものならば、会社は傾き、社員の生活を守れなくなります。そのため経営者は、誰にも負けない努力が習い性になるまで続けなくてはならないのだと思います。

 

というわけで、今日は「誰にも負けない努力」について色々と考察してきました。ぜひご参考にされてください。



>企業は人なりは嘘?
企業は人なりは嘘?

社長依存から脱却し、仕組みで成長する会社するためのガイドブックをプレゼント中。

CTR IMG