「常に創造的な仕事をする」の意味と実践方法



清水直樹
「常に創造的な仕事をする」は京セラ創業者稲盛和夫氏が示された仕事をする上での大切な考え方です。本記事では、この考え方を実践する方法を見ていきましょう。

 

なお、本記事は、始動塾塾長の恩田社長のお話を参考にさせていただいております。恩田社長は盛和塾の元世話人であり、仕組み経営も導入いただいているDETO社の社長です。

始動塾については以下からご覧ください。

https://www.yokunare.jp/

 

「常に創造的な仕事をする」という言葉は、稲盛氏の「経営12カ条」と「フィロソフィー」の両方に入っています。経営12カ条は主に経営リーダー向けの原則で、フィロソフィーは全社員向けの哲学です。この両方に同じ項目が入っているということは、それだけ稲盛氏が大事な項目であると考えていたのだと思います。

フィロソフィ&経営12カ条に書かれている内容

現在の自分の能力で、できるできないを判断していては、新しいことなどできるはずがありません。「今はできないものを何としてもやり遂げたい」という強い思いからしか、創造的な事業、創造的な企業が生まれることはないのです。

強い思いのもと、日々連綿と重ねる絶えざる創意工夫の道の先にこそ、創造的な事業があり、独創的な企業が存在します。

– 経営12カ条 第10条

与えられた仕事を生涯の仕事として一生懸命行うことは大切ですが、ただそれだけでよいということではありません。一生懸命取り組みながらも、常にこれでいいのか、ということを毎日毎日考え、反省し、そして改善、改良していくことが大切です。決して昨日と同じことを漫然と繰り返していてはいけません。

毎日の仕事の中で、「これでいいのか」ということを常に考え、同時に「なぜ」という疑問をもち、昨日よりは今日、今日よりは明日と、与えられた仕事に対し、改善、改良を考え続けることが創造的な仕事へとつながっていきます。こうしたことの繰り返しによってすばらしい進歩が遂げられるのです。

– フィロソフィ

 

「常に創造的な仕事をする」ためのポイント

常に創造的な仕事をするためのポイントを簡単にまとめておきましょう。

地味な仕事にも創造性を

たとえば、掃除といった地味な作業においても、毎日の積み重ねが新たな洞察を生み出します。 軽視されがちな作業こそが、創造的な発想や効率化の種を育むのです。「なぜこうしているのか」「どうすればもっと効率的になるのか」という問いかけが、地味な作業の中に潜む可能性を引き出します。地道ながらも着実な努力が、大きな変革へと繋がります。

このプロセスには好奇心と楽しさが欠かせません。 仕事に対して好奇心を持ち、それを楽しむことで、地味な作業も新しい挑戦として受け入れやすくなります。モチベーションを維持し、日々の努力を続けるためには、楽しみながら目標に向かって歩むことが肝要です。地道な作業を楽しむ姿勢が、創造性を引き出す秘訣となります。

経営者が変化を受け入れる

また、経営者のリーダーシップが不可欠です。 経営陣が創造的な仕事を奨励し、変革をリードする姿勢が、組織全体に広がります。積極的なサポートと柔軟なアプローチは、従業員に新しいアイディアを生み出す自由を与え、組織の創造力を高めます。

1%でもいいから改善を続ける

「毎日1%改善」を合言葉に、地味な努力を惜しまず積み重ね、創造的な仕事へと昇華しましょう。 未来への展望を持ち、その一歩一歩で現在の自分を高めていく努力こそが、持続的な成果を生み出す鍵です。地道な積み重ねと、未来への明確なビジョンが交わるところで、組織は持続的な成長とイノベーションを迎え入れるのです。

 

「常に創造的な仕事」を実践する仕組みとは

仕組み経営では、「常に創造的な仕事」を実践するための仕組みの導入をご支援しています。以下はその一例ですので、ぜひご参考にされてください。

仕事の価値を伝える

日々改善を続けるには、社員に自分がやっている仕事の価値を伝えることが大切になってきます。それによって、彼らは自分の仕事が世の中にもたらす価値を認識し、自発的に改善しようという意欲が出てくるのです。たとえば、セラミックの仕事は実は肉体労働のようなもので、学歴の良い社員ほどその仕事に価値を感じられていなかったそうです。なので稲盛氏は、セラミックの仕事がいかに世の中の役に立つかを語り続けていました。仕組み経営では、職務契約書というツールを使って、その仕事の価値や目的を伝える方法をお勧めしております。

自社が目指す価値を明確にする

社員の創造性を引き出すには、ゴール地点を明確にしてあげる必要があります。創造性とは、現状と理想の状況を埋めるためのものです。そのため、何が理想の状態なのかを明確にすることが欠かせないのです。その理想の状態に向けて、日々の仕事で創造性を発揮し、改善を積み重ねていくことで会社の力が高まっていきます。

そして、仕事の価値には、以下のような段階があります。

価値の段階

最低価値

顧客が期待しているレベルより低いレベルの価値しか提供できない。

普通価値

顧客が期待しているレベルと同等の価値を提供する。

満足価値

顧客が期待しているレベルを超える価値を提供する。

感動価値

顧客が感動するレベルの価値を提供する。

このうち、最低価値と普通価値しか提供できない会社は倒産に向かいます。満足価値の会社にはリピートが発生し、儲かります。感動価値の会社には行列が出来ます。



ちなみに感動価値の先には、さらに上位の尊敬価値というものがあります。尊敬価値とは、顧客が、”さすが〇〇社だ”と尊敬するレベルの価値を提供するということです。自社がどのレベルの価値を目指すかは決断の問題です。感動レベルの価値を生み出すためには、そこを目指すと決断をしなくてはなりません。

リーダーが自社の目指すレベルを示すことで始めて、社員は創造性を発揮してそこに至るための方法を考えることが出来るようになります。

ちなみに、ここで注意点があります。それは、価値は顧客が決めるということです。いくら商品のスペックが良いですよ、と言っても、それが顧客から見た時に価値になっていなければ余計な価値になります。

3つの人格を使い分ける

仕組み経営では、経営者は3つの人格を意識してコントロールすることが大事であるとお伝えしています。3つの人格とは以下の通りです。

1. 職人の人格―具体的な仕事への集中力

「職人」の人格は、目の前の具体的な仕事に焦点を当てる能力を指します。経営者が「職人」の要素をコントロールできることで、詳細な作業に対する洞察が深まり、高品質な成果物が生まれます。

2. マネージャーの人格―仕組みと組織の構築

一方で、「マネージャー」の人格は、システム的に物事を捉え、人々を効果的に組織して仕事を進める能力を指します。経営者が「マネージャー」の側面を強化することで、効率的な業務プロセスが確立され、組織全体がスムーズに機能します。

3. 起業家の人格―未来を創造する

経営者にとって、最も重要なのが「起業家」の人格です。これは未来を予測し、新しいアイデアや戦略を生み出す能力を指します。まさに創造的な仕事をする人格です。経営者が「起業家」の視点を持つことで、市場の変化に適応し、競争力を維持できるような組織の方向性を定めることができます。

一方で、これら3つの人格は経営者だけに求められるものではありません。程度の差はあれど、組織内の全ての人が起業家的な人格、すなわち創造性の人格を発揮することが求められます。いま自分はどの人格で仕事をしているのか、実践できていない人格はどれかを日々意識することが創造的な仕事をすることにつながります。

 

4つの創造を行う

創造ということについて、稲盛氏は4つの創造を行うことを説かれています。市場の創造、需要の創造、新技術の創造、新商品の創造です。

市場の創造

新しい市場の創造は、既存の需要や産業にとどまらず、未開拓の領域を見つけ出し、新たな顧客層を取り込むことを意味します。市場の創造には消費者のニーズやトレンドを見極め、それに基づいて独自の価値提案を生み出す能力が必要です。

需要の創造

需要の創造は、顧客の欲望や問題を解決する新しいアイデアやアプローチを開発し、それを効果的に伝えるマーケティング戦略が求められます。また、消費者の行動や期待を理解し、それに対応する柔軟性が重要です。

新技術の創造

企業は積極的に新技術を取り入れ、それを活かして業務プロセスや製品の改善を図ることが求められます。最近であれば人工知能、ブロックチェーン、IoT(Internet of Things)などのテクノロジーを組み合わせて新しいソリューションを生み出すことで、競争上の優位性を確立できます。技術の創造にはリサーチと開発への投資、専門知識の獲得が必要です。

新商品の創造

新商品の創造は市場の要求やトレンドに合致し、同時に競合他社との差別化ポイントを見つけ出すことを意味します。顧客の声に耳を傾け、フィードバックを活かして製品やサービスを改良することが重要です。

特に経営者は、これら4つの創造を行うことを自らの職務と考え、日常的に行う必要があるでしょう。

業務ごとにムリムラムダの判定を行う

仕組み経営では、仕組み化の過程において、業務の整理を行います。その際、業務ごとにムリムラムダの判定を行います。ムリとは求められる成果に対して、リソースが足りていない状態を示し、ムダとは求められる成果に対して、リソースが多すぎる状態を示し、ムラはムリとムダの両方が混在している状態を示します。

ムリムラムダの判定を行うことで、改善の方法が見えてきます。そして、その改善を創造力を発揮しながら実行していきます。このように、業務の改善を仕組み化することで、常に創造的な仕事を実践していくことが出来ます。

 

 

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