自燃性の人にするには?可燃性と不燃性との違いも解説。



清水直樹
今日は、社員を自燃性の人にするためにはどうすればいいかを見ていきましょう。

自燃性、可燃性、不燃性とは?

これは京セラ名誉会長で日本航空を復活に導いた経営者として知られる、稲盛和夫氏が考案した言葉です。稲盛氏は「物に自燃性、可燃性、不燃性があるように、人間には、自分で燃える自燃性、周りから焚きつけられて燃える可燃性、周りが燃えても燃えない不燃性の3タイプがある」と語っておられます。

経営者であれば、常に「自分の会社をこうしよう、ああしよう」と考えているはずです。ましてコロナ流行や円安など、会社を取り巻く状況が不安定な中では、なおさらカッカと考えている方が多いのではないでしょうか。

そういう中で、例えば「今、うちの会社はこういう状況なんだから、こうやろうじゃないか。こうやってくれ」と言った時、皆さんの社員はどのような反応を示しているでしょうか?その時の反応によって、人は自燃性、可燃性、不燃性の3タイプに分けられると稲盛氏はおっしゃっているわけです。

今回は、この3タイプの定義、そして自燃性の人を増やすために経営者の皆さんが知っておくべきこと、やるべきこと、注意すべきことをご紹介していきます。

自燃性、可燃性、不燃性の違い
自燃性、可燃性、不燃性の違い

自燃性とは?

自ら燃える人というのは、言われたから仕事をする、命令されたから仕事をする人ではありません。そうではなく、誰かから言われる前に、自ら燃え上がることができる人のことを言います。高いモチベーションを持って仕事をし、その熱い情熱は時に周りの人を燃やすこともできます。

会社の中のあちこちに自分と同じように燃えている人がいる、こちらから声をかけなくても勝手に燃えている人がいるという状況が理想なわけですから、経営者としてはこういう人を増やしていきたいと思うわけです。社長が一生懸命になって旗を振らなくても、自分で旗を振ってくれる、会社にとって最も必要な人材だと言えます。

また、「足るを知る」という言葉がありますが、原典となった老子の「知足者富、強行者有志(足るを知る者は富み、強めて行う者は志有り)」の後半部分にあるように、現状に感謝しつつも努力を怠らない向上心を持った人も、この自燃性の人に含まれます。

可燃性とは?

放っておいても勝手に自分から燃えるというほどの積極性はなくとも、自燃性の人、既に燃え上がっている人の影響を受けて燃え上がることができる人です。もちろん、自ら燃えてくれる自燃性であることには越したことはないのですが、燃えている人が周囲にいる時には一緒に燃え上がることができます。

このようなタイプの人にも大切な役割があります。例えば、自燃性の人にいくら熱い情熱があっても、1人では叶えられない夢や目標はたくさんあります。そんな時にはこの可燃性の人がサポート役としてチームを組むことで目標を成し遂げることができます。ですから、可燃性の人も会社にとっては必要不可欠な存在なのです。

一般に、経営者というのは自燃性の人が多いと思われがちですが、必ずしもそうではありません。事業を引き継いだ2代目や3代目の社長の中には、たまたまお父さんの仕事を次ぐことになったとしても、「親父から引き継いだ事業を何とかして守らなくては」というような使命感や責任感によって燃えている人もいるわけです。

不燃性とは?

こちらがどんな熱量を持って言葉を発しても、こちらが冷めてしまいそうなぐらい反応が悪い人のことです。このタイプは指示待ちとなる傾向が強く、自分から創意工夫を凝らしたり、何かを提案するといった積極的なアクションを起こすことはありません。

自燃性や可燃性の人たちに対してシラケた態度を取ったり、距離を置くことも多く、稲盛氏は「火を近づけても、エネルギーを与えても燃えない者、つまり多少能力はあったとしても、ニヒルで感動することができない人は、ものごとを成し遂げられない」としています。

ある程度の規模の集団にはこのようなタイプは1人や2人必ずいるわけです。しかし、このような不燃性の人は、周りの人から熱意や情熱を奪う存在であり、特に中小企業の場合、このような人がいると会社の雰囲気が非常に悪くなる危険性があるため、できることなら避けなくてはなりません。

なぜ自燃性の人を増やさなくてはいけないのか?

組織というのは「場の空気」によって変化するものです。そして、場の空気を複雑にするのが人の意識です。

2:6:2の法則

「2:6:2の法則」という有名な法則があります。これは一般的に、組織は意欲的に働く上位20%、普通に働く中位60%、怠け者の20%に分かれる傾向が高いという法則です。

この法則は、働きアリの集団にも見られます。働きアリの場合、積極的に食料を集めるために働くのは全体の20%、60%は普通に働き、残りの20%はサボっていることが分かっています。積極的に働く上位20%が、全体の80%の食料を集めているという研究結果もあります。これは組織内の自燃性・可燃性・不燃性の割合にも当てはめて考えることができます。

多数派=可燃性の人への影響

自燃性の人は他者への影響力が強いので、可燃性の人の意識は高揚し、チャレンジ精神が湧いてきます。反対に、周りに不燃性の人が多くなると、ネガティブな態度によって可燃性の人の意識レベルは低くくなりやすくなります。つまり、多数派である可燃性の人の意識を高められるかどうかによって、場の空気が左右されるわけです。

例えば、組織に新しい価値観や規律が持ち込まれたとしても、自燃性の人は好意的に受け止めます。自発的に燃えることができるため、外因的な要素に意識を左右されず、周囲への影響力も低下しません。

不燃性の人は周りの火を消すこともある

しかし、不燃性の人は、現状は現状のままにしたいという「現状維持バイアス」にかかっているため、なかなか行動を変えられません。それどころか、「やってもムダ」「無理なものは無理」と理不尽な抵抗を続けて「水を差す」ことがあります。

このように、場の空気の良い組織は、意識の高い人がますますパフォーマンスを発揮できるようになり、空気の悪いチームは、どんどん意識の低い人が増えていってしまいます。ですから、自燃性の人を増やす必要があるわけです。

自燃性の人を増やすには?

ここまで述べたことから分かるように、企業(経営者)にとって最も欲しいのは、物事に対する熱意や情熱を持ち、自分から率先して物事に取り組んでエネルギーを周囲に分け与える自燃性の人です。

稲盛氏は高校野球を例に挙げ、「心から野球の好きな若者たちが、甲子園という大きな目標を目指し、一丸となって生き生きと練習に励んでいます。その姿には、未来への可能性とエネルギッシュな躍動が感じられます。彼らは自ら燃える自燃性の集団なのです」と語っておられますが、これは同時に企業の理想的な在り方と重ねることができます。

自燃性の人が勝手に生まれてくるわけではない

しかし、そのような人が自然発生的に社内に生まれるという都合の良い話はありません。例えば、稲森氏が日本航空の再建に乗り込んだ時、「幹部たちは高学歴で頭は良いが、破綻の原因を他人事のように語る『聡明才弁(頭が良くて才能があり、弁舌が立つ人)』の不燃性ばかりだった」そうです。そこで稲盛氏は自らの言葉で彼らの心を焚きつけ、困難に立ち向かう姿を行動で示し、不燃性を可燃性へ、さらに自燃性へと変えていったわけです。

ここからは、自燃性の人を増やすために採用時点で心がけること、そして今いる社員をどのように自燃性に変えていくのかを説明していきます。

採用時点で性格を見極める

仕事をやり遂げるためには大変なエネルギーが必要ですが、そのエネルギーは、自分自身を励まし、燃え上がらせることで生まれてきます。そして、自分を燃やす一番良い方法は、仕事を好きになることです。どのような仕事であっても、全力を打ち込んでやり遂げれば、大きな達成感と自信が生まれ、また次の目標へ挑戦する意欲が生まれて、さらに仕事が好きになるという理想的な循環が起こります。



経営者なら誰しもこのように「自ら燃える人」を多くの候補者の中から見つけ出して採用したいと思うわけです。そのためには、やはり採用段階でそれぞれの性格を見極めることが必要になります。燃えるタイプを見つけたいなら、勝ち気で常に何事にも積極的な性格の人を探しましょう。そういう性格の持ち主が自分に与えられた仕事を好きになると、自発的に燃え上がっていくからです。

責任感と使命感を持たせる

とはいえ、何のキッカケもなく自ら燃えることができる人は貴重なわけです。では、それほど勝ち気でもなく積極的でもない、真面目で大人しい人を自燃性へと導くにはどうすればいいのでしょうか?ここで、責任感や使命感を持たせることが大切になってきます。例えば、少人数でもいいので部下をつけて、その部門の責任者になってもらうわけです。

そして「あなたはこの部門を守ってください。それが会社にとっても社会にとっても意義があるんですよ」と説明することで使命感や責任感を持たせ、その人が自分から燃え上がることができるように促すのです。

ビジョンやミッションの共有を欠かさない

ただし、自ら燃える自燃性の人を闇雲に増やせば良いのかというと、そういうものでもありません。会社のビジョンやミッションを顧みず、それぞれがバラバラに猪突猛進しているようでは、いずれ組織は崩壊してしまいます。

自分たちはどんな領域でどんな仕事をして、どのような社会貢献してくのかという明確なビジョン、さらには会社としてのミッションを常に共有していかなくてはいけません。ビジョンを全社員の間に定着させ、それに基づいたミッションを明示することで、全員が同じ方向を向けるようになります。

そうなれば、たとえ不燃性の社員がいたとしても同志的な結び付きが生まれていき、自燃性・可燃性・不燃性の3タイプ全員がチーム一体となって進んでいくことができるようになります。全員の力が1つの方向にそろった時、集団(会社)としての目標達成へとつながっていくわけです。

自ら燃える組織にしていきましょう

「仕組み経営」では、自燃性の社員を増やし、自ら目標達成に向かって燃える組織づくりのご支援をしています。詳しくは以下の仕組み化ガイドブックをダウンロードしてご覧ください。

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