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「井原西鶴もびっくりの仕組みとは?」2024年1月22日号


一般財団法人日本アントレプレナー学会の清水です。

​さて、井原西鶴はご存知の通り、江戸時代の俳人・浮世草子作家です。

今回の話は、彼が伊勢参詣に行ったときの話です。

(何年か前に配信した話ですが、示唆深いので改めてご紹介します)

その時、彼が泊まった宿では、一度に2,000人から3,000人もの参詣客に食事を提供していたそうです。

当時、伊勢参宮の楽しみの一つが、伊勢国の山海の珍味だったそうですから、食事処は大忙しだったようですね。

井原西鶴は、

これだけの食事を一度に提供するとは、どんな台所になっているのか?

と気になり、宿の裏手に回りました。

現代のような調理器具がない時代です。彼は、数百人の料理人がいるのだと思ったのです。

しかし、台所にはなんと、20人くらいしかいませんでした。

わずか20人で2,000人から3,000人の食事を提供していたのです。

どうやってそんなことが実現できたのか?

実はその調理方法に秘密がありました。

・飯は、とても大きな釜にまとめて入れて煮立たせる。

・魚はまな板を使わず、出来高制で働く職人がぶつ切りに。

・魚を焼くのは時間がかかるので、大釜にまとめて入れて煮る。その後にコテで撫でて、焦げ目を付けるだけ。

などなど、通常とはまったく異なる仕組みで調理されていたのです。

これには西鶴も驚きました。

昔の料理といえば、丹精こめてひとつひとつ丁寧に作る、というイメージがありますが、実は当時から、大量生産のシステムが存在していたのです。

これは伊勢参りをする大勢の人々をもてなすために、工夫して創り上げた料理法だったそうです。

通常、提供する食事を増やそうと思ったら、料理人を増やすことを考えたり、料理人をもっと急かして、より多く作らせることを考えます。

しかし、それでは人件費がどんどんかさむばかりか、限界があります。

そこで、”20人で2,000人の食事を提供するにはどうすればよいか?”と視点を変えたことで、上記のような仕組みが完成したのです。

先ほどの3点、

・飯は、とても大きな釜にまとめて入れて煮立たせる。

・魚はまな板を使わず、出来高制で働く職人がぶつ切りに。

・魚を焼くのは時間がかかるので、大釜にまとめて入れて煮る。その後にコテで撫でて、焦げ目を付けるだけ。

これらを抽象化してみると、

・道具を変えることで、作業を圧倒的に効率化する。

・手順を変えることで、時間を圧倒的に短縮する。

・成果物(顧客から見て必要十分なモノ)を変えることで、作業をシンプルにする。

ということになります。

現代のチェーン店でも実行されていることですね。

仕組み化の効能はこういった”拡張可能性”をもたらすことにあります。


■仕組みづくりを進めようとするとき、二つの方法があります。

​ひとつは、仕事をひとつひとつ良くしていく方法です。

これが改善と呼ばれるもので、先ほどの例でいえば、魚を切ったり、飯を炊いたりするのをより早く、上手く行う方法を追求することを指します。

もうひとつは、改革と呼ばれるもので、プロセスの変更や道具の変更によって、段違いの効果効率を実現させます。この例のように、一気に様相を変えてしまう方法です。

​基本的には、改善と改革を両輪で進めていくことが大事であり、改善の連続の先に改革のアイデアが生まれ得ます。

​そして、その際に重要なのは、

​「20人で2,000人に食事を提供するにはどうすればよいか?」

というような問いかけを自分に対してすることです。

「〇〇するために、どんな仕組みが必要なのか?」

という問いがなければ、どんな仕組みが必要なのか?がわかりません。

そして、〇〇に当てはまるのは、”一見すると不可能なこと”です。

一見して不可能に見えることを実現できる仕組みがあるからこそ、成長し、圧倒的な存在になることが出来ます。

ぜひあなたの会社や業界において、

「〇〇するために、どんな仕組みが必要なのか?」

という問いの〇〇に何を入れたらいいのか?を考えてみてください。



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