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「サービス業をいかに9倍にしたか」2024年1月15日号



一般財団法人日本アントレプレナー学会の清水です。

今日は、仕組み経営の考え方と方法を活用して、ウェブコンサルティングの会社を9倍の規模にした事例をご紹介します。

この会社のA社長は、当初、週80時間働き、自分がいないと会社が回らない状況であったうえ、請求書を払うお金にも苦心し、家族も破綻していました。

それから仕組み化に取り組むことを決意し、社員も増え、以前の9倍の売上になりました。

どのようにして出口のない状態から抜け出して、成功していったのかを担当したコーチとのインタビュー形式でお届けします。

内容としては、

  • 自分中心のハブ型組織から抜け出し、事業を9倍にした方法
  • 長期と短期のバランスを取るダブルビジョンの考え方
  • 顧客サービスを標準化するために最初に取り組んだのは、〇〇の文書化
  • 事業と人生を劇的に変えた中毒からの脱出
  • 大家族的文化を作るために行ったこと

などです。

以下からぜひご覧ください。

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A社長

当時、おそらく一週間に80時間働いていました。目が覚めているときは常に働いているのが当たり前でした。一方でそれがずっと続けられることではないことは分かっていました。

そんな時、1-800-GOT-JUNKの話を聞いて、7万円の中古車で始めた事業がこんなに大成功するならば、自分にもできるはず、と思いました。少なくとも今より人間らしい生活はできるようになると。

そこでコーチに助けてもらうことにしたのです。1時間コーチと話し、第三者の立場から、 「大丈夫、これを少しずつ解決していきましょう。」と言ってくれる人の存在の大切さを知りました。

コーチ

コーチを付けることで、やるべきことが明確になると同時に、コーチとの約束があるからやらないといけないという責任感を感じたと思います。それに対して抵抗はなかったですか?


A社長

正直言って少し怖かったです。なぜなら、毎日、あらゆることが私を中心に動いていて、忙しすぎたからです。

しかし、最初の頃、コーチとのセッションで、背中を押してくれる人がいることがありがいと感じました。

“これをやったらどうなりますか?”

“代わりにこれをやったらどうなりますか?”


というような質問もしてくれました。

こういった質問無しでは、仕事に追われ続けるだけだったでしょう。


コーチ

私たちは“短期的には不快に感じるものの、長期的には、その人に必要なこと”を実行する支援しています。これをダブルビジョンと呼んでいます。

なぜ私はこれをやっているのだろうか?なぜこれを自分自身でやっているのだろうか?

そういった質問をすると、これは自分の人生に貢献するものではない。もっと上手いやり方を見つけよう、何かを変えよう、と考えられるようになります。

ダブルビジョンがあれば、今やっていることと、新しい事業の創造を同時に出来ます。大きなビジョンを描きながら、やるべきことを優先順位をつけて出来るようになります。そして、進んでいるという実感も得ることが出来ます。


さて、仕組み化していくなかで、大変だったことを教えてくれますか?


A社長

ビジョンやブランドなどを文書化することです。販売や開発など、目の前の仕事をこなして利益を上げることだけが必要だと考えていたからです。

ビジョンやブランドの文書化は仕組み経営のカリキュラムの一つ。

しかし、私は自分に言い聞かせ続けました。高層ビルを建てるなら、砂場に立てることはできない。しっかりしたコンクリートの基礎が必要だと。

最初は月1時間の会話のときだけが、ビジネスの外側から仕事をしている時間でした。

そのうち、コーチとの時間が来るまでに、課題に取り組む時間を取るようになりました。

そのような活動をしていなかったら、いまの状態にはなっておらず、事業の継続すら諦めていたかも知れません。

事業が変わった最も大きなきっかけは、自分が“忙しさ中毒”に陥っていることに気が付いたことです。それはコーチからの指摘で分かったのです。

こんなきっかけでした。

昔、5,000万円の契約の話がやってきました。当時からすると、非常に大きな額でした。その契約を取るための提案書を作る必要がありました。

提案書の締切は、次の月曜日の午後5時でした。私は週末も缶詰で徹夜をし、目の下にクマを作って月曜の朝に出社しました。そして、チームメンバーを呼んで、無茶な仕事を振りました。どうしてもこれをやってくれ、という感じです。

そこでチームメンバーが、“どうやってやればいいのかわからない”と言ったので、私は自分でやったほうが早いと思い、自分でやることにしました。

そして、午後4時59分に送信ボタンをクリックして、提案書を送ったのです。その瞬間、“これで成功した!”と歓喜しました。

コーチとの会話で、私のそのような体験が忙しさ中毒をもたらしていることに気が付いたのです。

自分が忙しくすることで成功を収めた、という経験があったために、成功するとはこういうことだ、という無意識の思い込みがあったのです。

コーチ

社長に限らず、全ての人には、繰り返し起こっているパターンがあります。ですから、私たちコーチとしては、この社長のパターンは何だろう?何が何度も何度も起こっているのだろうか?その原因は?と考えるようにしています。何事も、自分で自覚しなければ変えることが出来ないのです。


A社長

それに気が付いたのは、本当に重要な瞬間でした。ビジネスに対するコーチングというよりも、人生を変えてくれた瞬間でした。


コーチ

忙しさ中毒は、社長にありがちなパターンですね。すべてのプロジェクトにイエス、と言ってしまう行動とも結びついています。半直感的ですが、すべてのことにイエスということで、稼ぎが少なくなっていることがあるのです。


A社長

そうですね、私たちもあらゆる人に対して、あらゆることを提供していました。ごちゃまぜですね。


コーチ

ビジョンやブランドの文書化をすることで、どの案件にイエスと言い、どの案件にノーというのかを理解できるようになります。社長は自分のみならず、社員の時間にどれだけの価値があるのかを知らなくてはなりません

本当に対象とすべきではない案件にノーということで、よりリターンの大きな魅力的な案件にイエス、ということが出来ます。

それから、自分たちが本当にうまくできる分野が特定できました。

通常、我々のような業態は、見込み顧客から電話がかかってきて、予算を聞いて、わずかばかりの利益を乗せて見積もりを計算します。この段階で、4-6時間もかかっていました。忙しくなるのも無理はありません。

いまはサービスや見積もりを標準化してあるので、そんなことはありません。非常に生産性があがりました。

そこからさらに、顧客を絞りこみました。住宅販売分野です。彼ら専用にサービスを作り、マーケティングの効果がわかりやすいようにしました。その結果、彼らは我々に支払ったコスト以上の利益を上げることができるようになりました。

コーチ

数年前までは週に80時間以上働き、あらゆるクライアントにあらゆる仕事をしてきたのが、いまではクライアントを選ぶ立場になっているということですね。


A社長


そうですね。実際のところ、問い合わせの75%くらいは私たちから断っていると思います。

あるとき、本来は対象外の案件を受けようとしました。今月の支払いが出来なくなるという不安があったからです。

そのとき、コーチから“その案件を受けたらどれだけ時間が取られる?”と問われました。考えた結果、その案件を断わりました。結果論ではありますが、3週間以内に、同じ働きをして、倍の対価を得られる案件を受けることが出来ました。


コーチ

御社のような業態だと、顧客サービスの品質を標準化するのが難しいと思うのですが、どのように標準化を進めたか話してくれますか。


A社長

まずブランドを文書化するところからはじめました。何を生み出したいかはわかっていたのですが、これだ!と思えるものが文書化できるまで行ったり来たりしました。

ブランドを文書化してからは、ひとつの市場に対して、ひとつのサービスしか提供しないようにしたので、サービスを仕組み化するのはそれほど難しくありませんでした。


コーチ


ブランドを定義した文章は全員のデスクに貼ってあるようですね。


A社長

はい、そうです。私たちは服装もカジュアルで、楽しさをクライアントに伝えることにしています。クライアントとも冗談を言い合います。それが他との違いにもなっています。


コーチ

世の中の大半の理念なものはお飾りになってしまいますが、御社のブランドは、単なるスローガンではなく、体現しているわけですね。

2週間前に御社に入社した人と話す機会がありましたが、“これまで働いてきた職場の中で最高の職場だ”と言っていました。顧客に対してだけではなく、社員に対しても、同じように対応する会社を創ったわけですね。


A社長

はい、そうですね。大半の会社ではパーソナルな関係づくりが欠けていると思います。うちでは社内SNSを使っていて、そこでカジュアルなやり取りが頻繁にあります。

だからこそ、顧客ともカジュアルなやり取りが出来ます。そのようにコミュニケーションすることに慣れているからです。

誰かがチームに参加してきたときには、家族にようこそ、と伝えます。本当に家族のようなものなのです。

私の祖父も起業家でした。私も少しだけ、その会社にいたことがあるのですが、社員みんな、仕事に来ることを楽しみにしていて、残業があってもだれも文句を言いませんでした。やるべきことが あれば、何でもやる、という感じでした。私もそのような会社を創りたかったのです。

採用するときには、最初の面接でブランドを紹介して彼らが文化に合うかどうかを判断するようにしています。スキルよりも会社に合うかどうかです。


コーチ

組織文化づくりは、みんながしなくてはならない、と思っているものの、具体的にどうしたらよいのかわかっていないものでもあると思います。


 A社長

そうですね。私の場合、祖父が会社をやっていたので、どんな環境が理想で、自分がどんな文化を作りたいかがわかっていたことが大きいです。それにもとづいて、コーチとのやり取りで、採用の仕組みを作ったのです。

採用する前に、ブランドやビジョンやコアバリューについて伝え、それらは私たちの会社の核となることであり、変更することはない、と伝えます。そして仕組み化に取り組んでいることも共有します。

事前にそれくらいの共有をしなければ、お互い時間の無駄になってしまうからです。

もちろん、採用候補者が人生で何に動機付けされるのか?何に情熱があるのか?こういったこともお互いに知り合います。

仕組み化に取り組む2年前には、誰を採用していいのか明確な答えは持っていませんでした。


コーチ

たまたま会社の文化に合う人が入ってくるのを待つのではなく、そのような人を集め続ける仕組みを作ったことが大きいと思いますね。

思い返せば最初に思い描いていた理想を実現していますね。私たちは会社は経営者の人格の反映である、いつも言っています。そう考えると、あなたは自分が何者かを理解し、自分の分身ともいえるチームを創ったといえますね。


A社長

はい、波及効果のようなもので、仕事面だけではなく、個人面にも大きな影響がありました。もし、コーチをつけるという決断をしなかったら、私はおそらく破産していました。本当にありがとうございました。

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以上となります。

特にA社長と同様のサービス業の方には役に立つ内容だったかと思いますが、その他の業種でも活用できる話があったかと思います。

ぜひご参考にされてください。


では本日は以上となります。

引き続きよろしくお願いいたします。



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