ライン&スタッフ組織の創り方。社長依存の組織から抜け出すために。



清水直樹
今日は、社長依存から抜け出すためのライン&スタッフ組織についてご紹介したいと思います。
動画でも解説しています。

日ごろ私は、会社の組織づくりや仕組みづくりをお手伝いしていますが、その大きな目的は、会社の経営を社長依存の状態から脱却させることです。

そのために必須とも言えるのが、このライン&スタッフ組織づくりです。

 

ライン部門、スタッフ部門とは?

まずライン部門は、その会社の本業を動かす部門、機能のことです。例えば営業、製造、購買&仕入れです。

一方スタッフ部門は、このライン部門を支援する部隊。例えば総務や人事、経理、経営計画といった部門のことをスタッフと呼んでいます。

私は会社員時代にこの両方をやりました。主にライン部門でしたが、しかたなくスタッフ系機能もやらないといけないことがあって、結構大変だった時期がありました。その辺については後でご紹介したいと思います。

別業態で、店舗ビジネスをされているところは、大体こんな組織になっています。

店舗がいくつかあって、店長がいてという感じです。他に本部という機能があったりします。ここはスタッフ部門になります。ラインは、この各店舗の例えばホール、飲食なら調理といった感じでライン部門が要は利益を生み出すものです。

店舗の運営を支援するのが、本部であるスタッフ部門ということになります。その上に社長がいます。

組織化ができている会社は、このラインとスタッフが両方あるということです。

中小企業が成長するには、スタッフ部門が必須

一方、中小企業や、まだまだこれから成長しようという会社の場合には、スタッフ部門がなかったりします。まず、ラインだけ整っていて、社長がいるみたいな感じで組織が成り立っているというケースがあるわけです。

中小企業やこれから成長しようとする企業が、より大きく成長していくためには、絶対このスタッフ部門が必要になってきます。

組織運営上必ずこういった部門は必要になってくるので、どこかのタイミングでつくらないといけないという話です。

 

いつライン&スタッフ組織に移行するか?

では、いつそのスタッフ部門をつくるかということが問題です。

起業当初はライン部門だけで回る

まず、起業して会社がある程度回ってくるころは、社長がいて営業がいて、製造、購買、仕入れといったように、スタッフ部門がなくライン部門だけで成り立っている組織構造になります。

すると、社長であったりもしくは管理職の営業部長や製造部長、購買部長は、ライン部門の管理職または社長が、本来スタッフ部門がやるべきことを兼任しているという状態になります。

例えば、小さい会社であれば、社長が人事を全部やったり、社長の奥さんがもしくは家族が経理をやったり、社長が総務をやったりするわけです。いわば、社長業をやりながら、スタッフ的なことを兼任しているという状態になるわけです。

社長のジレンマがスタッフ部門創設へと結びつく

ここで、社長のジレンマというのが出てきます。社長としては当然、これから成長していこうとしているので、売上をがんがん上げていきたい。そのために時間を使いたいと思っています。

一方で、人が増えてくると人事も総務的なことも、経理のお金のこともやらなければならなくなり、このスタッフ機能は基本は売上につながりません。

本来は、売上を上げる活動に時間を使いたいのだけれども、実際に組織運営するに当たって必要なスタッフ的な利益を生み出さない活動に時間を取られるというわけです。

これが、非常に多くの、中小企業とそのビジネスの社長にありがちなジレンマです。

経験談:全部自分でやっている限り、成長は出来ない

私は、会社員の時に営業をやっていました。ライン部門で働いていましたが、ある時にプロジェクトを任されて、それは東京外のあるエリアで拠点を立ち上げないといけないというものでした。

その時にメンバー数がだいたい60~70人いましたが、私は営業をやりつつスタッフ機能も全部やらなきゃいけないという状況だったわけです。



もちろん、本部が東京にあって、本部のスタッフ部門からいろんな支援をもらいながらだったんですけども、現地に私しかいなかったので、メンバーの寮の物件を探したり、寮でのインターネットの回線の手配とか人事の採用…といった、スタッフ事業をやらなければならないという状況でした。

一方で、会社上の役職としては営業なので、営業もしないと評価されないということです。

スタッフ部門のところに時間をかけなければいけないけれど営業もやらなければ、という非常に大変でジレンマを感じた時期がありました。その時、そろそろ人員を入れないといけないということで上司に相談しました。

人事経験者を入れさせてもらったり、アシスタント的なことやってくれる人を入れたり、スタッフ人員を増やしていった経験があります。

なので、こういうジレンマを感じている時がスタッフ部門を入れるタイミングということです。

 

ラインとスタッフの対立

次に、スタッフとラインの対立という話をします。

なぜラインとスタッフで対立するのか

ラインとスタッフはだいたい、対立します。

ライン部門が持つ不満

ラインは営業職、スタッフは人事や経理です。人事や経理の人たちには、面倒な仕事ばっかり振ってくるというようなクレームがあったりするわけです。

例えば、人事の人は「アンケートしてください」と来たり、経理の人は「あれ出してください」「これ出してしてください」と言ってきます。

営業としては、お客さんに会って案件を取ってくるのが花形の仕事であって、そこに時間を使いたいけど、会社のルールによる業務が出てくわけですね。「それやりたくない」「そんな仕事ばかり増やすな」みたいな不満があります。

場合によっては、上から目線でスタッフの人たちが発言してくる、ということもあります。チェーン店などに多いですね。

本部は、基本的にその店舗の運営を支援する人だけども、「本部」という名前が付いているので、上から目線で店舗の人にいろんな指図をしたりすることがあるので、それが嫌だという不満だったりもします。

スタッフ部門が持つ不満

一方、スタッフの方には、期限どおりに書類を提出してこないというクレームが起こります。

例えば、社内向けのアンケートとかいろいろやるけれど、なかなかみんなが提出してこない。「提出してくる書類に記入漏れが多くてそれ直すのが大変だ」みたいなことがあって不満が出るということ。

ラインとスタッフは、利害が一致してるはずだけど、社内的にそう思われていないためにこういう対立が起こってしまうということがよくあるわけです。

 

スタッフ&ライン組織をうまく回すには?

いま述べたような対立を回避し、スタッフ&ライン組織をうまく回すためには、という話に進んでいきたいと思います。

自分の顧客が誰か?という認識

まずは「自分の顧客は誰か」という認識です。これをちゃんスタッフの人にもラインの人にも持たせるということが大切です。

基本的に、自分の仕事の後工程にいる人を(自分の)顧客と呼びます。

営業の顧客はお金を払っていただける人

例えば、営業部門は製造部門がつくった商品をお客様に対して提案して売る仕事です。

製造の人がつくった商品を倉庫に置いておいても、誰もそれを知ることがないし、誰もそれを欲しいと思わないですね。

営業の仕事は、その倉庫に置いてある商品をお客様に対して分かりやすいように説明する資料をつくったり、そのお客様に対してどう役に立つのかというその提案書をつくったりして、その商品に付加価値をつけるわけです。

そこで自分の仕事をやって、その上でお客様に対して資料を見せたり説明したりして販売しているという仕事です。

そう考えると、営業の仕事の後工程の、1つの商品を買ってくれる人になりますので、その人がお客さまということになります。

ほかの仕事も全部そうなんです。

総務の顧客は他の社員

例えば、総務の人が社内のパソコンを購入してみんなで使うようにするという仕事があったりします。



すると、総務の仕事は、パソコンを購入してセットアップするという仕事になりますが、その後工程は誰かというと、そのパソコンを使う人ということになります。

総務のお客様は、社内でそのパソコンを使う人ということになるのです。

そう考えると、お客様に喜ばれるような仕事をしないといけないですね。

これはラインとスタッフ、社内の全員がそういった感覚を持ってもらえないとだめです。

自分の仕事の後工程の人がお客様なので、その人は、より上手く仕事できるようにしてあげるのが自分の仕事だ、と認識してもらう必要があります。

ライン部門で、実際にお客様と接している人たちは、目の前にいるのでわかりやすいですけど、スタッフ部門の場合には、今の考え方でいうとお客様が社内にいるということなので、その認識が持ちづらいです。

ただ、その認識がないと、この仕事を何のためにやっているのかというのがわからなくなるので、ラインに対して非常に不満を持ったりしやすくなるということです。

相手をお客様と思えば、どんな仕事でもいろいろ工夫のしようがあります。

この感覚を持っていれば、社内での対立はどんどん少なくなっていくということです。

”誰がお客様なのか”を教えてあげる必要がある。これが1つ目です。

 

指示系統の統一

ライン&スタッフの組織では、スタッフ部門とライン部門の担当者同士が、直接やり取りしていろんな業務を動かしだすと混乱が起こります。

ライン部門は、ライン部門の中で上司がいるわけです。そこからの指示が来る。一方でスタッフ部門の人からもいろんな要求が来ます。すると業務が混乱してしまいます。

なので、指示系統を統一する必要があるということです。

基本的な考え方としては、1人には1人の上司しかいない、その1人の上司から指示を受ける。この系統をちゃんと統一しなればいけません。

スタッフとラインがいる場合で、まずスタッフの役割としては、その会社をよくするためにいろんなサポートをするわけです。いろんな企画をしてサポートするわけですけれども、その業務は基本的に、まずスタッフの人たちは上司に提案します。

その上司の人は、まず、ライン部門の同じランクの人たちと話してもらいます。

そこで「これは取り入れたほうが良さそうだ」となると、ライン部門の上司はそれをさらに部下に落としていく、v字というか、一旦上を経由して指示を落としていく系統にする必要があるわけです。

例えば人事部門の人が「こういう人事プログラムでやりましょう」となった時、その人事の担当者は、直接、営業や製造の部長に行ってはダメだということです。

まず人事部長の方に行って、「こういうプログラムはどうですか」と提案して、人事部長が「いいね」となれば、人事部長は基本、次はさらに上の上司に行くわけです。

その上司がさらに「これいいね」となれば、営業部長や製造部長に落とし込んでいくという流れでやらなければいけません。

それだけ、指示系統を統一する必要があるということになります。

ライン&スタッフをつくりたての場合は、指示系統が入り乱れるケースが結構あるので要注意です。

スタッフ&ラインの人材交流

今はいろんな法律が変わってるのでどうかわかりませんが、私が会社員で営業をしていた頃は、営業で外回りして夕方に帰ってきて、いろんな処理をした後に同僚と結構飲みに行ったりしました。

会社に帰ってきたぐらいの時には、スタッフ部門の人たちは「お疲れ様です」みたいな感じで帰っちゃうわけです。そうすると、一緒に飲みに行ったりすることもないし、仕事上事務的な手続き以外の交流がなかなかありません。



それが先ほどの話のような、感情的な対立を起こしやすいということです。

人材交流は結構大事です。オフラインというか、事務的な手続き以外のオフラインのコミュニケーションも大事だということです。

あとは、単純に交流させるだけじゃなくて、人事異動というのもあるでしょう。

例えば、営業経営の経験者の人がスタッフ部門に入ると、結構いい仕事をするんです。営業の気持ちがわかっていて、スタッフもちゃんと営業の気持ちを汲み取って仕事をしてくれるので、非常にいい仕事するというケースがあります。

スタッフがラインになるのはあまりないかもしれないけど、ラインがスタッフに行くと非常にいい仕事をするということがあります。なので、人事異動も1つの手でしょう。

 

スタッフ部門の投資効果

さきほどの人件費の話ですが、ここをどう考えるかということです。

スタッフ部門の人件費がどこから出ているのかを、社長もちゃんと理解しないといけないし、現場の皆さんも理解しないといけないということです。

1st Stage:ライン部門が稼ぎ出したお金でスタッフ部門を創る

まず雇う前です。ライン部門しかない状態の時に、どういうタイミングでスタッフを雇うかというと、そのラインの人たちが生み出した利益が十分に出てきた時に、余裕ができたお金で初めて経理や人事の人を雇います。

借金をして雇うわけにはいかないので、ちゃんと利益が出る状態になったらスタッフを雇うおうという話になるわけです。

ここまでは当たり前の話です。

 

2nd Stage:スタッフ部門は自らの働きで人件費を稼ぐ

この後が結構ポイントで、雇った後、スタッフの部門の人たちは、ラインの生産性を高めることで自分の人件費を生み出すというマインドで働かないといけないということです。

ライン&スタッフの組織形態ができたのは、いろんな説がありますが、テイラーという、科学的管理法という手法を生み出した人が考え出した組織図がヒントとなって生まれたと言われています。別の動画で説明していますので、ぜひご覧いただきたいです。

▶科学的管理法(by フレデリックテイラー)とは?問題点、メリット、デメリットについて解説

 

例:スタッフ部門は利益を上げるための必須機能

テイラーさんの時代でも100年以上前なので、スタッフという考え方がありませんでした。

1. 勘と経験の組織では利益が160

鉱山で働く現場があって、例えばチームが3つあったとします。それぞれ働いている人がいて、そこにそれぞれリーダーがいます。

当時は、経営もそれほど科学的に行われていなかったので、生産高がこのリーダーの勘と経験によって全然違っていました。

あるチームでは、リーダーの能力が優れてるので生産高を50生み出せる。一方であるチームは30しか生みだせない。さらに一方であるチームは80生み出せる。こんな感じで非常にバラつきのある組織が多かったわけです。

本当に勘と経験、属人的なやり方で生みだされるのが多かったわけです。

この会社であれば、利益がトータル160ということになります。テイラーさんや当時のいろんな科学者、研究者が考えたのは、このばらつきをもうちょっと統一させれば、会社全体の利益は上がるんじゃないかということです。

30の人が80、50と生産高を上げられれば利益も上がるわけですから、統一させればいいんじゃないかという話になります。そこで登場させたのが、このスタッフ部門ということです。

2.スタッフ部門を創ったら利益は(一時的に)60に減る

 

現場の作業をいろいろ分析したりして、「こういうふうにやりましょう」と、企画するものをつくったり、これがスタッフ部門の走りだと言われています。

スタッフ部門の人たちは、現場で働かないので生産しません。なので、コストになります。

ただ、充分な生産高を上げていて、それが利益160をあげていればスタッフ部門の人件費比として100を使っても全体として160から引いても60は残るのでいいかなということです。



3. スタッフ部門が機能すれば利益は300に増える

スタッフ部門は、単にここで人件費だけ浪費して、会社に居られるだけではもちろん困るので、現場で与えている人たちの生産性アップの支援をするということです。

分析したり、考えたりして、どうすればもっと能率が上がるかということを会社全体に提案するわけです。

50.30.80といった生産高のばらつきがあったところを100にして行きましょう。そのための作業の仕方や道具の使い方などを変えて全部100にして行きましょう。このような提案をするわけです。

すると、ばらつきがあった状態から、生産高を100に統一すると利益が300にも増えます。

スタッフがいなかった時は全体で160。一方でスタッフ部門入れて、この支援させて生産性を高めさせれば、300引くことの100なので200儲かります。

スタッフという、一見利益を生み出さない人たちを入れても利益が増える構造になります。これが、そもそものスタッフの役割です。

現場の生産性を高めさせるというのは、本来のスタッフになりますね。ここを認識しないといけないし、社長もこの原理をわかっていないといけないということです。

スタッフは、最初はコストとしているわけで、ライン部門が稼いだお金でいろんな人を雇うわけです。入れた後はそのスタッフがちゃんと機能して、会社全体の生産性を高めて利益を上げていくという仕事に従事しないといけない。そうしなければ入れる意味がないということになります。

人件費がネックで、スタッフ部門もなかなか入れたがらない社長もいますが、やはり考え方がちょっと違っていて、スタッフはコストではなく利益を上げるために入れるんだ、という、その考え方を社長も、入ってきた人も持つ必要があるということです。

 

社長依存から抜け出す組織づくりなら仕組み経営へ

というわけで今日はライン&スタッフ組織の解説をしました。ぜひ参考にしてください。

なお、仕組み経営では、このような社長依存から抜け出す組織づくりをご支援しています。詳しくは以下からご覧ください。

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