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会社の希望売却額の相場は5億円?
私の周りの経営者に聞くと、会社を売るなら5億円くらいで売りたい、という人が多いようです。なぜ5億円で会社売却したいと思う人が多いのでしょうか?これには、
- 5億円だったら今までの労力が報われる。
- 5億円だったら残りの人生をゆっくり暮らせそう。
- 5億円だったら新しいことにチャレンジする資金が出来そう。
といったような思いがあるのでしょうか。
私個人的にも5億円というのは、中小・スモールビジネス経営者が目標とするひとつの目安であると思います。その理由は次の通りです。
リスクに対するリターンとしての5億円
まず経営者は普通の会社員よりも多くのリスクを負っていると思います。銀行からの借り入れも経営者の個人保証になっている場合が多いですし、起業するという決断をした時点で、安定を捨て去り、多くの時間と労力をビジネスに注ぐことになるわけです。そういう意味で経営者の人生は、会社員よりはリスクが高いわけです。
会社員の生涯年収は2019年のデータによると、2億1803円だそうです。つまり、起業するというリスクを冒さない場合に得られる収入が2億1803円ですから、リスクを取って起業した場合には、それより大きなリターンを得たいと思うのは当然のことですね。
会社売却後のネクストステージへの資金として5億円
もうひとつ、5億円での会社売却を目指す理由としては、人生の次のステージへ行くために妥当な金額である、ということがあると思います。もちろん、何をするにしてもお金はたくさんに越したことは無いです。ただ、5億円で会社売却すると、税金を引かれても手元にだいたい4億円くらい残ります。
これは会社員の生涯年収の約2倍ということになり、お金のために働く必要がなくなります。「金持ち父さん 貧乏父さん」の言葉で言えば、”ラットレースを抜けた状態”と言えるでしょう。
人生のネクストステージの選択肢は人それぞれですが、
- 新しい事業を始める
- 安定した資産に投資をする
- 趣味やボランティアに生きる
などが主流でしょうか。
これが売却金額が2億円となると、手元に残るのは1億数千万円となります。もちろん、大金ではありますが、悠々自適に残りの人生を過ごせる、というような金額でもありません。
そのため、5億円で会社を売る、というのは一つ目指したい目標でもあると思います。
5億円で会社売却した事例
ではここから、実際に5億円で売却された会社の事例を見ていきましょう。ぴったり5億というのは稀なので、5億±1億円くらいで見てます。ご紹介するのは、インターネット上に公開されている情報を基にしていますので、ここでご紹介しても差し支えないと判断しています。
RIZAPグループがアパレル会社を取得、数年後に売却
売り手企業:株式会社三鈴
買い手企業:健康コーポレーション(RIZAPグループ)
売却金額:4.5億円
年:2016年
一つ目は、RIZAPで有名な健康コーポレーション(RIZAPグループ)によるM&A事例です。売り手企業は女性向けアパレルを展開する株式会社三鈴。売却金額は4.5億円です。
株式会社三鈴は、創業1963年の老舗と言っていいアパレルメーカーです。
以下、会社HPより
全国の駅ビル、ファッションビル、ショッピングセンターにRewde、ShopDADAの 直営33店舗を展開しています。加えて自社ECサイト『カリーナクローゼット』を運営し、 世の中の流れを敏感にキャッチしながら、お客様から選ばれる商品をご提供しています。 また生産機能を有し、OEM受注生産、リメイク・リペア事業、卸売事業も行っております。
2008年には4℃ホールディングスの傘下入りをしており、実質、同社からRIZAPグループへの株式譲渡ということになります。ちなみに、さらにその後、RIZAPグループから東京アプリケーションシステム株式会社への譲渡がされています。その際の売却金額は2.2億円になっています。
三鈴は譲渡時には売上が48億円もあるのですが、それでも売却金額は5億円弱になっています。安すぎない?と思うかも知れませんが、三鈴の業績を見てみると納得がいきます。
以下、プレスリリースから三鈴の業績を抜粋。
ご覧の通り、業績は芳しくありません。
ちなみに2020年には、RIZAPグループが同社を手放しますが、2019年には売上が25億円程度、純資産も3億4000万円程度、自己資本比率も27%にまで落ち込んでいます。
RIZAPグループとしては事業拡大を目指し、女性向けアパレルというライフスタイルブランドを増やし、三鈴もV字回復させたかったのだと思いますが、上手く行かなかったと言っていいでしょう。
妥当な売却金額?
売り手企業:株式会社モバコレ(株式会社千趣会の100%子会社)
買い手企業:株式会社ロコンド
売却金額:4.88億円
年:2019年
次は株式会社モバコレの売却案件です。こちらも業態は女性向けアパレルとなっております。同社の業績は以下のとおり。
こちらも好調とは言えない状態ですね。単純に考えて、H29年の純資産+営業利益4年分で4.6億円なので、標準的な売却金額とも言えるでしょう。
高値で売却した理由とは?
売り手企業:レモネード株式会社
買い手企業:UUUM株式会社
売却金額:5.02億円
年:2018年
次の案件は、インフルエンサーマーケティングプラットフォームを提供するレモネード社の株式をYoutuberなど多くのインフルエンサーをマネジメントするUUUM社が取得した件。ITに詳しくない方には”いったい何してる会社なの?”と思うかも知れませんね。
インフルエンサーというのは、影響者という意味で、要するに、一般消費者に対して発言権や影響力を持つ人のことを指しています。Tvタレントなんかがわかりやすいですが、最近ではテレビに出てなくても、SNS上で大きな影響力を持つ人たちがいます。その人たちに自社の商品を宣伝してもらえれば売り上げが見込めるというわけなのです。そのような手法をインフルエンサーマーケティングと言います。
レモネード社は商品を売りたい企業とインフルエンサーをつなげるためのツールを提供しており、どのインフルエンサーに依頼するか?どのインフルエンサーがどれくらいの成果を出した、などのデータを管理できるようです。
では同社の業績を見てみましょう。
先述の2社と比べると資産、売上、利益ともに桁違いに低いですね。そもそも同社は設立が平成27年ということで、設立したばかりのスタートアップだったと言えるでしょう。利益が数百万円程度しか出てない会社になぜこれほどの金額が付いたのか?
詳しいことは当事者のみぞ知るわけですが、ひとつの要素としては、UUUM社の事業とのシナジー効果が見込めるためでしょう。UUUM社はインフルエンサーを多数抱えるわけですが、それを管理するためのツールがあれば非常に都合が良いと言えます。そのツールを自社開発するよりも、すでに完成されているものを買ってしまったほうが早いということでしょう。
もうひとつ、スタートアップ系のM&Aの場合、アクハイアリング(Acqui-hiring)という観点もあります。これは買収と採用をくっつけた造語で、相手の人材を自社に取り込むために会社ごと買う、ということです。優秀な人材が事業成長のカギを握るIT企業なんかでは良く使われるようです。今回の案件でも、レモネード社の前社長は、その後、UUUM社の役員についているようなので、アクハイアリングの要素もあったのかも知れません。
目安として一番わかりやすい売却案件かも?
売り手企業:株式会社スタープランニング
買い手企業:株式会社ツナグ・ソリューションズ
売却金額:4.61億円
年:2017年
最後の事例は人材業界です。東北エリアで人材派遣業を展開するスタープランニング社。買ったのは採用関連のビジネスを展開するツナグ・ソリューションズ社。採用だけではなく、人材派遣にも力を入れようと同社を傘下にしました。
同社の業績は以下の通りです。
売上こそ10億円を超えていますが、営業利益は直近で4,200万円と、それほど利益率が高いビジネスではないようです。なぜ5億円弱の価値がついたのでしょうか?ひとつには業績が堅調に推移していることがあると思います。プラスして、昨今の人材不足という情勢、さらに同社が持っている地元のネットワークもプレミアムとして働いたと考えられます。(あくまで予想ですが)
希望売却額の相場、5億円で会社を売却するには?
以上、4つほど5億円で売却された案件を見てきました。それぞれ業界も違いますし、売上高、利益高もバラバラでした。こう見てみると、5億円の値段が付く理由もそれぞれだと言えるでしょう。
いずれにしろ大切なのは、
1.自社の何が資産なのか?何が強みなのか?を知り、
2.適切な買い手企業を選び、
3.適切なタイミング(これから成長しそうな)で売る。
ということでしょう。
ぜひ参考にされてください。
なお、高値で会社売却したい方には、以下の高値売却マスタークラスがお勧めです。
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