経営者は世界をデザインせよ

真の起業家は世界の設計者



清水直樹
マイケルE.ガーバー氏によれば、職人的な経営者は目の前の仕事をすることに没頭して生計を立てるのに対し、起業家的な経営者は世界のあるべき姿を思い描き、それを実現するためのビジネスを設計します。

マイケルE.ガーバー氏・・・世界700万部のベストセラー「はじめの一歩を踏み出そう」の著者であり、世界No.1の中小企業アドバイザー(米INC誌による)に選ばれた。当サイト「仕組み経営」のもとになっている思想を提供してくれた人物。詳細はこちら>>

本記事では、2015年マイケルE.ガーバー氏の自宅にて収録した映像の書き起こしをお届けさせていただきます。

社員15人から1,000人以上へ急成長した秘訣

経営者は世界をデザインせよ

7年前、あるソフトウェア会社の幹部達がやってきました。私のプログラムに参加したのです。彼らは既に私の本を読んでいました。そして、その内容を自社の発展に活用していました。

彼らは全員エンジニアでした。自分たちでソフトウェアを作っていました。ハードウェアとソフトウェアがありますが、ハードはツール(道具)であり、ソフトウェアはアイデアです。

乗り気でない参加者の物語

当時のことを明確に覚えています。彼らはプログラムに参加しましたが、いまいち腑に落ちていない様子でした。そのうちの1人が、2日間半のプログラムが始まる前にやってきました。

彼は言いました。

あなたの本の内容は、私のようなエンジニアにとっては、とても理解できます。仕事を行う上で、システムを作らなくてはいけないということ、そして、よりよい方法を探し続けることについては私もそのとおりだと思います。しかし、なぜ夢が必要なのでしょうか?

そこで私は答えました。

まず2日間半を一緒に過ごしましょう。既に参加費を支払って、わざわざフェニックス(アリゾナ州)からカリフォルニアまでやって来たのですから。私が提案することを心を開いてやってみて、何が起こるのかを見てみましょう。終了後にもう一回話しましょう。そして、いまあなたが私にした質問の答えを私に教えてください。夢を見るとはどういうことなのか?という質問の答えを。

すると彼は理解して席に戻り、他の40人の参加者と一緒にスタートしました。彼のほかにはマーケティング副社長、財務の副社長、オペレーションの副社長がいました。

終了後にCEOのスコットがやってきて言いました。

これまでの考え方が吹き飛びました。もし、あなたが最初に2日間半で何が起こるのか説明していたら、私は信じることが出来なかったでしょう。完全にビジネスが変わりました。なぜなら、ビジネスに対する考え方が完全に変わったからです。私たちはソフトウェア会社だと思っていましたが、そうではなかったのです。ソフトウェアを売ることが仕事だと思っていました。しかし、もう私達全員がそうではないことに気がつきました。私たちには今、夢、ビジョン、目的、ミッションがあります。まだ、それらが何か、明確に理解していないかも知れませんが、もう今までのようには決してなりません。

そういって彼らは帰ってきました。当時、彼らの社員は15人しかいませんでした。7年前です。

いまでは1,000人を越えています。米国でもっとも大きなベンチャーキャピタルから54億円を調達しました。そして、毎年2倍の成長を続けています。

それもすべて、彼らがソフトウェアを開発するだけが仕事ではないと気がついたからです。毎日忙しく働き、より優れた職人になることだけが目的ではないと気がついたからです。

彼らの新しい社屋の壁には夢、ビジョン、目的、ミッションが掲げてあります。私達の夢はこれで、ビジョンはこれで、目的はこれで、ミッションはこれで、というように明文化してあります。そして社員が毎朝出社すれば、それを見ることになります。それらは7年前には全く存在していませんでした。

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真の起業家はビジネスの設計者

同じことが毎回、全ての人に起こります。これは素晴らしい体験です。自分の中で、いままで知らなかった誰かが目覚めるのです。

だからただ働くだけでは駄目なのです。起業家は目の前の仕事をやり続けるだけではいけません。本当の起業家はビジネスデザインのマスターです。

デザインし、構築し、成長させる。またデザインし、構築し、成長させる。革新を続けるシステムとしてそれを続けるのです。

自分たちのビジネスはいったい何なのか、顧客は誰なのか、どんな社員なのか、それを新しい視点で見直すのです。

それがスティーブ・ジョブズと、毎日忙しく働き続けているだけの経営者の違いです。彼らは毎日忙しく働き続けているだけで、世界中の人たちに自分のアイデアを届けるということを体験したことがありません。

自分を総動員して追求するべきアイデア

以前、少しだけ私のビジネスパートナーだった人がいます。彼は私の本についてこう言いました。

本は本に過ぎないですよね

私は言いました。



しかし「聖書」も本に過ぎないですね。「戦争と平和」も本ですね。「孫子の兵法」も本ですね。

と。

つまり、それらは単なるひとつのアイデアに過ぎないですね。しかし、マクドナルドもひとつのアイデアから生まれたのです。

アップルもひとつのアイデアから生まれました。インテルもひとつのアイデアから生まれました。コンピューターもひとつのアイデアから生まれました。フォードもひとつのアイデアから生まれました。

どれも単なるひとつのアイデアに過ぎません。そう、そのアイデアこそが、全ての中小企業経営に欠けているのです。

自分の持てるものを総動員して追及する価値があると思えるアイデア、それこそが欠けているのです。

何度も何度も言いますが、一緒に夢を見に来てください。

これまでに自分で作ってしまった限界を超えて、心を開いて、これまでに想像したことのない可能性を追求してください。あなたの人生はこれまでの体験したことがないところへ到達するでしょう。

自分の人生をこれまで見たことのない新鮮な視点で見たとき、驚嘆することになるでしょう。それが最初に話した彼らに起こったことです。

彼らは最初に質問しました。

”夢を見るとはどういうことですか?”

それは”あなた自身”についてのことなのです。物事をこれまでに見たことのない見方で見ることなのです。

何を知らないかを知らない

私はこれまで世界中の国の人たち、何万人もの人と話してきました。彼らの多くは、私の書籍を読んでいました。

私が彼らに、“何を学びましたか?”と聞くと、彼らは書籍から得た洞察を教えてくれました。本を読んで人生が変わりました、すべてが変わりました、ビジネスが変わりました、人生が変わりました、といってくる人も多かったです。

もっと詳しく教えてください、と言うと、私はいつも驚きます。彼らは私が書いた本を読むだけで、それを本当に理解し、信じ、不に落とすことで、すべてが変わったといいます。

しかし、そんなときに私が気がつくことは、私の伝えたいことが完全には理解されていないということです。

アリゾナ州のフェニックスで講演したとき、ある人物と出会いました。彼は涙を浮かべて私のところにやってきました。彼は8年前に私の講演を聞き、私の書籍を読み、もう一度読み直し、3回読み直し、ビジネスが完全に変革したといっていました。

どのように変化しましたか?と聞くと、彼が学んだことを教えてくれました。彼のように、新しい考え方を得て、心を動かされることで、“これが自分が探していたものだ”と思うかも知れません。

しかし、問題は、彼が何を知らないかを知らない、ということなのです。彼は書籍を読んでアイデアを得て、会社を変革させました。

しかし、彼らが理解していないのは、“本当は何が起こり得たのか?“ということなのです。彼はこれまでとは違った視点でビジネスを捉え始めました。

継続的な自己変革

ただ、そこでまた違う問題に直面しているのです。これまでと同じように。本当は、自分自身の中で、継続的に自己変革をしていなかければいけません。

ビジネスの観点から言えば、イノベーション、数値化、組織化というビジネス開発プロセスがあります。これは私たちが世界中のビジネスと接する中で創ったものです。このプロセスによって、会社の中のビジネスのやり方、結果、システムが進化していきます。

イノベーション(新しい仕事のやり方を発見すること)、数値化(新しいやり方の効果を数値化すること)、組織化(その改善したやり方をシステム化すること)というプロセスです。

問題は、多くの人は、このプロセスがストップしてしまうことです。イノベーションが止まり、数値化が止まり、組織化が止まり、プロセス全体が止まります。

彼らはこれまでと違ったやり方を発見するのですが、そこで止まってしまいます。そこに囚われてしまいます。新しいやり方を見つけて、そこで満足して止まってしまうのです。



涙を浮かべて私のところにやってきた人物は、まさにその問題に直面していました。ビジネス開発プロセスは一度やって終わりではありません。以前より優れたやり方を見つけたら、さらに優れたやり方を見つけ続けるのです。スティーブ・ジョブズのように。彼は自分が創った世界に決して満足することがありませんでした。

変革のプロセスには終わりがない

ですから、本を読んだら十分、というわけではありません。本は写真のスナップショットのようなものです。

もし、プロセスを継続的に、適用し続けることができたならば、物事が継続的に変化します。それによって、これまで得られなかった洞察が得られるでしょう。これまで体験したことのないような状態になります。

これは一度やって終わりなのではなく、常に動かし続けるべきプロセスなのです。本を読むのはスタートに過ぎません。いましているように、会話をしているのと同じです。そこから継続的なプロセスを始めなくてはいけません。

変革とは今いる場所から、継続的に進化し続けることを意味するのです。この話の最高の事例として、スティーブ・ジョブズが挙げられます。

彼は決して立ち止まることがありませんでした。新しい世界を創造し続けました。

次々と新しいものを生み出し続ける彼を見て、周りの人は“どうやったらそんなことが出来るんだ?”と驚きます。それは彼の想像力の産物なのです。これまでほかの誰もがやったことがないほど、自分の可能性を発揮し続けました。

この地球上のすべての人が、同じ可能性を秘めています。そのためには、心を開かなくてはいけません。進んでリスクをとらなくてはいけません。心を開いて、リスクをとらなければ、何を体験しても、それを生かすことが出来ません。

これまで以上の何かを発見しよう

私は人生を通じて、幸運な体験をしてきました。

私は人々を悩ませ続けてきました。なぜなら、彼らを、いまいる場所から、さらに飛躍させようとしてきたからです。彼らに、もっと出来るはずだ、と言い続けてきました。これまで見えていなかったものを発見してもらうためです。彼らの目を覚ますためです。本当の意味で目覚めさせるためです。

すると、停滞して、無駄に過ごしていた人が、突然目覚めて“いままで何をやっていたんだ?”と気がつくのです。私のように、79歳になって、“いままで何をやっていたんだ?”と目覚めることがどういうことか想像できますか?

32歳のときに眠りにおちて、79歳で目覚めるようなものです。そして、“いままで何をやっていたんだ”と気がつくのです。

同じように、生きながら眠っている人がいませんか?周りにたくさんいるでしょう。ですから、本を読むだけでは十分ではありません。もっとたくさんのことが必要です。

自分の夢、ビジョン、目的、ミッションを発見しましょう。自分の人生には、これまで以上の何かがあることに気がつきます。それらはすべて自分自身の中にあります。何かが自分の中で待っているのです。

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