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「創業理念とストーリーを語り継ぐ仕組み」2024年2月13日号



一般財団法人日本アントレプレナー学会の清水です。

さて、2月11日は建国記念の日でしたね。

日本は世界最古の国として知られていますが、そんな建国の日に考えたいのは、自社の歴史についてです。

私たちは”仕組みで永続する会社”を目指していただくべく、仕組み化のご支援をしているのですが、そのために、欠かせない仕組みがあると考えています。

それが、「創業理念を語り継ぐ仕組み」です。

創業理念の意味

創業理念は自社がこれまでに存在して来られた理由であり、創業者の個人的な哲学や思想が込められたものでもあります。

老舗として繁栄を続けている会社は、ほぼ間違いなくと言っていいほど、創業理念を大事にしています。

逆に言えば、創業理念を失った(忘れた)会社は軸足を失い、衰退の道を進みます。

創業理念は、創業者が失敗経営を積み重ね、”べからず集”としてまとめたものという意味合いが強いです。

したがって、創業理念守り抜くことで、要らぬ失敗をすることなく、永続へとつながるのです。

創業理念が業績につながる理由

また、創業理念があることは、会社への信頼にも繋がります。

こういう想いでやってきたんだ、という歴史を感じるだけでも品質やサービスへの安心感につながるのです。顧客向けにも社員向けにも有効です。

創業社長の方であれば、自分が現役のうちに自分の創業理念を文書化して残しておくことが大切でしょうし、先代から会社を継いできた社長は、創業の歴史を紐解き、現代に生かすことが大切でしょう。

では、「創業理念を語り継ぐ仕組み」をどう創るか?

​​1.創業理念を文書化する

まず創業理念を文書化することです。

赤福の創業理念

たとえば、伊勢の赤福さんは、赤心慶福(せきしんけいふく)が創業理念であり、社名の由来にもなっています。これは赤子のような、いつわりのないまごころを持って自分や他人の幸せを喜ぶという意味だそうです。

トヨタ自動車の創業理念

まだ老舗とは言えないかもしれませんが、トヨタ自動車には、「豊田綱領」という有名な創業理念があります。

一、上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし
一、研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし
一、華美を戒め、質実剛健たるべし
一、温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作興すべし
一、神仏を尊崇し、報恩感謝の生活を為すべし

という5項目です。これは二宮尊徳の報徳思想が基になっています。

トヨタ自動車には別途会社の理念がありますが、豊田綱領が一番トップに来る考え方となっています。

​​2.創業理念を物語で強化する

創業理念は言葉なので、それをより記憶にとどめやすくするために、物語で強化することが大事です。

うちの会社も歴史を沿革としてホームページに書いているよ、という方もいるかもしれません。

しかし、沿革は事実を述べただけであり、人の記憶に残りにくいのです。

あらゆる宗教が物語で語り継がれているのは偶然ではありません。

物語でしか人の記憶には残らないのです。

歴史とは、虹のようなものである、と渡部昇一さんが遺しています。

水滴が集まっても虹にならないのは、それらが単独で存在しているからではなく、特定の条件が整って初めて虹として見えるから。

同様に、歴史の出来事も個々の事実だけではなく、それらが相互に関連し、全体として意味を持つとき、つまり、
物語になったときに初めて歴史として理解されます。

たとえば、

・●●年に工場が火事になった

というのは単なる事実であり、当時を知らない人からすると、何の意味も持ちません。

しかし、その工場が誕生した経緯や、どのように復興したのかを物語として知ることで、いまある工場を大事にしようという想いも出てくるわけです。

さて、とはいえ物語を創るのは作家でもない限り難しい、と思われるかもしれません。

創業ストーリーを作る鉄板テンプレート

そんな方には、鉄板の物語テンプレートがあります。

以下の通りです。​

  1. 日常の世界:個人が安定した生活を送り、日々のルーティンに従っている。
  2. 天命:ある日、主人公は偶然にも革新的なアイデアや技術を発見し、それが彼らの人生や世界に大きな影響を与える可能性があることに気付く。
  3. 賭け/決断:主人公は大きなリスクを冒して新しいビジネスやプロジェクトを始める決断をする。
  4. 探索:主人公は新しい世界やビジネスの領域を探求し、自らの限界を超えようとする。
  5. 困難:成功への道は容易ではなく、主人公は多くの困難や挑戦に直面する。それにもかかわらず、彼らは諦めずに前進し続ける。
  6. 変革:主人公は過去の自分や既存の状況との決別を経験し、新しい展望や可能性を追求する。
  7. ひらめき:ある時、主人公は問題の解決策や新たなアプローチについてひらめきを得る
  8. 挑戦:主人公は新しい挑戦に取り組み、その過程で成長し、自らの能力を試す。

本当は物語の設定なども必要ですが、ひとまず、このシナリオに沿っていただくだけで、人を惹きつける物語が書けます。

私の師匠のマイケルE.ガーバー氏は、このシナリオに沿った自分の創業ストーリーを40年以上、語り続けています。40年間、まったく変わりません。参考までに載せておくと以下の通りです。

  1. 日常の世界:牧歌的な生活を計画
  2. 天命:シリコンバレーの起業家と会い、彼が会社は仕組みであることを知らないことを知る
  3. 賭け/決断:新しいビジネスを始める決断
  4. 探索:創業した会社をワールドクラスの会社へと成長させる
  5. 困難:自分が創った会社との訣別
  6. 変革:過去の自分との訣別
  7. ひらめき:欠けていたピースを発見
  8. 挑戦:新しい挑戦として69歳で二回目の創業

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​​3.創業理念を表現する遺跡を探す、残す


​同じく渡部昇一さんによれば、歴史を知るには、文献と遺跡がリソースになります。

文献は先ほど申し上げた創業理念や物語です。

創業時の物理的なものを残す

遺跡は歴史を物語る物理的なものです。

会社の創業の地や創業時の商品などが当てはまるでしょう。

日本電産(NIDEC)は創業時のプレハブ小屋を本社の一階に再現していることで有名ですし、
経営スタイルにファンが多いパタゴニア社も、本社の横に創業時の倉庫が遺してあります。

パタゴニアの社員さんに聞いたところ、その理由はやはり、創業時の想いを忘れないためだそうです。

私が秀逸だと思ったのは、公文さんの広告です。

創業者公文公(くもんとおる)さんが息子さんのために手づくりした教材の写真が載っているのです。

それを見るだけで公文への愛着が湧きますよね。

私もなるべく、昔の写真を残すようにしています。そのうち、活用できるかも知れませんからね。

4.創業理念を伝える

あらゆる場所で創業理念を活用しましょう。

すぐに思いつくのは採用活動ですね。他には会社のHPや紹介資料、プレゼンテーションなどにも入れられます。


以上、創業理念を語り継ぐ仕組みは、顧客からは信頼を得られ、社員からは愛着を持たれるという効果があります。


しかも良いのが、お金をあまりかけずに出来るという点です。


ぜひ自社に当てはめて考えてみてください。

​では本日は以上となります。

​引き続きよろしくお願いいたします。



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