今回は、エイチアールプラス社会保険労務士法人 代表社員 佐藤 広一様のインタビューです。
佐藤さんは、HRプラス社会保険労務士法人(https://
いまでは、業界紙に多数の寄稿をされたり、各方面での講演、
実は佐藤さんとは、知人の紹介で別件でお会いしたのですが、
色々話しているうちに、
以下からどうぞご覧ください。
独立までの軌跡
父親は埼玉川越で精密スプリングの町工場を営んでいました。その「二代目」として見られることが嫌でずっと背を向けてきました。しかし、バブルが弾け、業績が急落し事業存続の危機となったとき、何故か素直に父親の一助になりたいと感じ、大手企業への就職をあきらめ父親の会社に入職しました。営業に奔走しつつ、日銭稼ぎの居酒屋の店長をやるなど精いっぱいやりましたが、その甲斐なく事業破たん。何のキャリアもなく世の中に放り出されました。
今さらサラリーマンはないな、と感じ資金がそれほどなくても独立開業できる「資格業」に気づき、「社会保険労務士」を知りました。今後わが国の重大な課題として顕在化することが予想される、医療、年金、介護、雇用問題に関われることにポテンシャルを感じ、実務経験を踏むべく都内の社労士事務所に入職しました。9年間にわたり実務を学び、その過程で資格を取得し独立開業しました。
実務経験があり、自分なりの戦略があったので大きなギャップはありませんでした。新規獲得に焦燥するのではなく、パブリシティによるブランディングを構築することが先決だと考えていたので、それを実践するだけで迷いはありませんでした。
最初は出版コンサルもいないので、企画書を作り、メールで受け取ってもらえないと思っていたので、飛込で版元に回りました。最初に行ったのが良いときに来てくれた、みたいな感じでした。向こうは書き手を探していました。新しい書き手、企画を探していました。
まだ開業して一か月くらいでしたが。小冊子を書いてくれということになり、30ページくらいの小冊子を書きました。そこから継続的に本編の依頼をいただくようになりました。それからメールで他の出版社にも送りました。
出版の企画を送ったら、雑誌ならいいかもということで、2年間の連載が決まりました。それから飲みに行って編集者と仲良くなりました。書いた記事を配って、仕事が来るようになりました。
仕組み化以前は社員の離職が相次ぐ
自分の考えていた以上に成果が出ていたので、自分のやり方に自信がありました。また、9年間の実務経験から獲得したクオリティを落としてはならない、という強い想いがありました。
そのため、スタッフを初めて雇用したとき、「自分にとっての当たり前」ができないことに愕然とし、いつも怒鳴り散らしていました。そして委縮したスタッフは退職していく。以後、採用、退職を繰り返し、事務所の人的資源は低空飛行を続け、結局、業務、営業、経理など事業運営に必要な仕事をすべて自分一人で対応せざるを得ない状況でした。当時の睡眠時間は4時間程度で本当に疲れ果てていました。
仕組み化の手順
そんな折、私の状況を知っているライフプランナーから「佐藤さんはきっとこの本が役立つと思うよ」というアドバイスをもらい、藁をもつかむ思いでAmazonから購入しました。
最初に衝撃を受けたのは「しくみ」で解決すること。こうした考え方は前職の事務所でも経験はなく、私にはまったく考えられない概念でした。仕組み化、見える化という言葉を知ってはいましたが、それは製造業の工程などの話であって、私たちのような士業に当てはまるものという考えはありませんでした。自分が井の中の「職人」であってマネジメントという意識がいかに希薄であるかを思い知らされることとなりました。
まず、3年後を見据えた組織図を作りました。役割を整理し、体系づけること。自分が抱えている役割がいかに多すぎるかに気づくとともに、どのポジションにどのようなスペックの人材をアサインするか、どのポジションから手当をしていくかなど今後の採用方針を立てること。自分の感情と組織上の役割を分離することで、自分と会うかどうかではなく、組織として必要な人材なのかどうかを採用基準とすること。組織図を作ることを通じて、こういったことが出来るようになりました。
たとえば、当職は労務トラブル対策や労務コンプライアンスに関する相談を得意としますが、アウトソーシングは苦手です。苦手である分野にその領域を得意とする人材を採用することで、自分は得意な業務に集中でき、また、事務所経営に充てる時間を確保することが出来ました。つまり、時間を確保することが出来るようになったのです。
次に採用したスタッフひとり一人に研究テーマを与え、第二象限(緊急ではないが重要なこと)への意識づけを行いました。社労士が関わる領域は広範にわたるため全員がすべての領域を深堀することは困難です。しかし、ひとり一人がひとつの領域に関する造詣が深まればチーム力がアップします。クライアントからの質問に自分が答えられなくても、その分野に詳しいスタッフが対応することが可能となるからです。
また、スタッフには新規クライアント獲得のための営業を課さないことを明言しています。それよりも自分の担当先に対してしっかりと価値を提供することに徹してもらいたいからです。「売上=単価×数量」このうち、「数量」については当職が担う、その代わり「単価」を引き上げて貰うための努力をしてほしい、価値を感じて貰える努力をしてほしいと伝えています。
チェックリストを作ったのですが、形骸化してしまうことが起きました。あるのにみていないということがありました。
自分の感覚でやっていて、給与計算を先月できたけど、今月間違ったみたいなことがちらほら出てきました。
それから月末MTGを始めました。私抜きでスタッフだけで集まってやります。
一か月間のことを振り返って、どんな事象をすべて共有し、仕組みで解決しようということをやっています。そこでチェックリストを改善し制度を挙げています。
チェックリストの最初の項目に、チェックリストを見る、という項目を入れました。
これはゴールが無いのかなと思います。常にメンテナンスして。人のせいにしなうようにしようとして、文化を作ろうとしています。
最後に
現在、事業ドメインのパラダイムシフトを決行中です。アウトソーシング主体から労務相談主体のビジネスモデルへの転換を図っているんです。
アウトソーシングは単価が大きく売上に大きく寄与しますが、マンパワーに依存し属人化が進んでしまいます。また、過誤があった時のダメージが大きく、クライアントの信頼を損ねやすい危うさがあります。スタッフは時間的な拘束を受け長時間労働を助長され、疲弊して辞めていく。また損益分岐点比率が高く、生産性が低い。この分野に関わり続ける以上、人的投資→回収しきれないうちに疲弊して退職→人的投資を繰り返すことになります。
クライアントに価値を届けやすく感謝されやすい、そして単価は小さいけれども損益分岐点比率が低い労務相談業務に注力することを意思決定しました。本当の意味での「顧問」として関わることができ、新しい提案をしやすい環境をつくることで、スタッフに社会保険労務士の価値を理解してもらい、リテンションにもつなげていきたいと考えています。
仕組み化なら仕組み経営へ
以上、いかがでしたでしょうか。
・パブリシティを使ったマーケティング
・未来の組織図を描く
・仕組み化のための定例会議
といった点が特に重要だったと思います。
本事例のように仕組み化・マニュアル化で自身のみならず従業員も幸せにイキイキ働ける、この状態は経営者の理想の状態です。
「必死に働いているのに業績が上がらない」
「日々の業務に追われるばかりでクリエイティブな作業に打ち込めない」
このような悩みを抱える経営者のみなさま、是非一度経営の仕組み化・マニュアル化を検討してみてはいかがでしょうか?