仕組み化とは?
最初に仕組み化とは?について解説します。
仕組み化の定義は次の通りです。
仕組み化とは、自社独自の再現性のある仕事のやり方を作ること。
上記の定義で重要なのは「自社独自」と「再現性」という言葉です。
自社独自=強み=独占的資産
まず「自社独自」という部分。”仕組み化=属人性の排除”と説明している人もいますが、それだけでは不十分です。仕組みづくりを正しく行えば自社の独占的な資産になります。仕組みは自社の独自性があるほど競争優位につながり、会社としての強さにつながります。会社ではなく個人で考えてみても同じことが言えます。一流のスポーツ選手は自分独自のルーチン(習慣)を持っていますね。これもまさに仕組み化です。自分ならではルーチンを続けることが他選手との違いを生み出すのです。
再現性=人に依存しない仕事のやり方
次に「再現性」という部分。中小企業の経営においては、経営者の能力が非常に高い、または優秀な社員が入社してきたからという理由で、会社が一気に成長することがあります。しかしそれはたまたま社長の能力が高いから、または、たまたま優秀な社員が入社してきたから成長できたのであって、再現性があるとは言えません。仕組み化というのは、何度も何度も繰り返し同じ良い結果を出すことのできる仕事のやり方を作っていくことです。
仕組み化とは良い習慣作り
「自社独自」と「再現性」をもっとわかりやすく言えば、「良い習慣作り」と言えます。会社の中に良い習慣をたくさん作っていくことが仕組み化となります。
良い習慣作りとは、特別な努力や配慮や留意、注意をしなくてもいつの間にか良好な結果が出ることです。
たとえば、歯磨きを考えてみるとわかりやすいでしょう。子供の時、歯磨きをしたり、させるのには努力を要します。子供にとってははじめてのことですからね。ただ、それでも続けていくと、歯磨きが習慣化できます。ひとたび習慣化できれば、大人になってからは、なんの努力もなく歯磨きをすることができ、それによって、自然と良好な結果(歯が白くなる、虫歯にならないなど)が出ます。
このように、勝手に良い結果が出るための、良い習慣作りを会社内でも行っていくことが仕組み化と言えるでしょう。
仕組み化が出来ていないことによるデメリット
会社はどこかのタイミングで仕組み化していかないと様々なデメリットが生じます。以下にその一例を見ていきましょう。
仕事内容が属人化し、担当が辞めたり、休んだりすると業務が止まる
仕事の属人化とは、仕事内容がそれを担当している個人に依存してしまっており、ほかの人ではできない、という状況のことを指します。仕事の属人化は、会社の成長にとって妨げになるケースが多いです。担当者が辞めたり、休んだりすると業務が止まるという致命的な状況になります。
また、さらに悪いパターンとしては、仕事内容を把握している担当者が、その仕事をやるかどうかを判断する非公式な権力を持ってしまうことです。そのため、同僚たちは、その人に仕事を依頼するのをためらったり、要らぬ気を使ったりしてしまいます。時には、社長ですら、その担当者のご機嫌をうかがいながら仕事をするという、なんとも非生産性的な状況になります。
仕事の品質が安定しない
人は機械と違い、その時の気分や体調によって仕事の品質が変わります。また、過去に行った仕事のやり方を忘れてしまったり、ミスをしてしまったりすることも当然起こりえます。
仕事が属人化してしまうと、そのような人独自の悪い特性が仕事の品質に影響を与えてしまうのです。そのため、仕事のアウトプットが安定しません。ある時はいい顧客サービスを提供できても、別の時には、それができない、ということも起こりえます。
これでは会社のブランドにも大きな悪影響を与えることになります。
不正の原因になる可能性
これはたまに事件化してニュースになったりしますが、仕事が属人化することで、ほかの人がその担当者が実際に何をしているのかがわからなくなり、不正が起きやすくなることがあります。
仕事内容の改善ができない
仕事内容が属人化してしまうと、改善が難しくなります。自分の行っている仕事の良し悪しを客観的に評価することができないからです。逆に、仕事内容を仕組み化し、ほかの人でもできるようにしてあれば、より良い仕事のやり方を議論し、改善させていくことができます。
仕事が人に依存し、スケールできない
どんな会社であっても、どこかの業務がボトルネックとなっており、会社の成長を妨げています。ボトルネックになっている業務は、たいていが属人化しており、特定の人(社長やベテラン社員)しか対応できないためにキャパシティーに限界があります。特に中小・成長企業では、社長自身がボトルネックとなっており、社長の時間と体力の限界=会社の限界となっている会社が多いのです。
仕組み化するメリット
次に、仕組み化のメリットについて見ていきましょう。
事業のスケールアップ
経営を仕組み化することで、事業の飛躍的なスケールアップが可能になります。たとえば、店舗ビジネスでいえば、チェーン店化が可能になります。店舗の運営を仕組み化すれば、社長でなくても店舗を運営できるようになります。そうすることで初めて、2店舗目、3店舗目と増やしていけるのです。また、店舗ビジネス以外でも、仕組み化することによって、業務が整理され、経営者は単に毎日忙しく働くだけではなく、本当に重要な仕事に時間を使うことが出来ます。
担当が交代しても困らない
成長企業や中小企業にありがちなのが、業務のブラックボックス化です。すなわち、その業務を担当している人にしか、業務内容がわからない、という状態です。そうなると、その人が休んでしまったり、辞めてしまったりすると業務が止まってしまいます。これは会社にとって大きな損失と言えるでしょう。仕組み化を行うと、業務の再現性が高まり他の人でもその業務を担当出来るようになります。
社長の自由時間増加
大半の中小企業の社長は、自分自身がプレイヤー(職人)として働いており、経営者としての仕事を十分にできていません。その原因は会社が仕組み化されておらず、社長にしかできない仕事がたくさんあるからです。仕組み経営では、経営者の仕事を分解し、仕組み化することで経営者が経営に取り組める時間を増やすことが出来ます。
休暇を取れるようになる
仕組み化によって、業務のブラックボックス化が無くなります。そのため、その人でなくても回せる業務が増えるため、社長や社員は休暇を取りやすくなります。
良い企業文化の醸成
人依存から仕組み依存へと文化を変革することで、社内から人を責める文化がなくなります。人依存の会社は、何かミスや不備が起こると、その原因を人に求めます。つまり、”あの人がミスした”とか、”あの人のせいで”というようなコミュニケーションが社内ではびこります。これは良好な職場環境を作るうえでよろしくありません。一方、仕組み依存の会社では、ミスや不備を仕組みを改善することで無くしていきます。”このミスが起こった原因はどの仕組みにあるのだろうか?”、”どの仕組みを変えれば、二度と不備が起こらないだろうか?”このようなコミュニケーションが行われるのが仕組み依存の会社です。
人材育成のスピードアップ
仕組み化の本質的な目的は、人の育成です。仕組みがあることで人が育ちます。たとえば、私たちは仕組み化をアドバイスできるコーチを育成するトレーニングの仕組みを用意しています。この仕組みがあることで、これまでに経営者向けにコーチングしたことのない人でも出来るようになるのです。(もちろん、トレーニングを受けたからといっていきなり独り立ちするわけではありません。最初はサポート付きで、訓練を繰り返しながら自立していきます)
業務を仕組み化することで、簡単な仕事はまだスキルや経験の少ない人に任せ、自分はより高度な仕事に時間を使うことができるようになるのです。これは社員にとってキャリアを成長させるチャンスとなります。
顧客満足度の向上
仕組み化されているビジネスでは、いつでも誰が対応しても同じような顧客体験を届けることができます。たとえば、スターバックスは世界各国にありますが、どこのお店に行っても、”スタバ体験”を感じることができます。これはスターバックスが自社のブランドをきちんと定義し、それを実現するための一貫した仕組みづくりをしているからなのです。日頃顧客と接している社員にとってみれば、自社が一貫性のあるサービスを提供できることは非常に大切であると感じるでしょう。
業務改善が可能
仕組み化を進めることで、改善が可能になります。社員みんなが属人的な仕事のやり方をしているのでは、改善が出来ているのかどうかも分かりません。”このやり方でやろう”という仕事のやり方が決まれば、生まれる成果も決まってきます。そうなって初めて、もっと成果を上げるためにはどういうやり方にすればいいのか?という議論が出来るのです。
高値での事業売却
高齢や次の人生ために事業売却を望む経営者はどんどん増えています。しかし、実態は事業売却しても二束三文にしかならないケースがほとんどです。それは事業の運営が仕組み化されておらず、経営者に依存してしまっているからです。仕組み経営のノウハウを活用することで事業を仕組み化すれば、何倍もの金額で事業売却が可能になります。
事業承継がスムースに出来る
いま、日本の中小企業の社会問題となっているのが事業承継です。会社を社員や家族に承継する場合においても、経営を仕組み化しておかなければ、後継者は大変な苦労をすることになります。また、経営者自身もいつまでたっても引継ぎが出来ないという状況になります。
仕組み化とマニュアル化の違い
※本項は動画でも解説しています。
日頃、多くのお客様の仕組み化やマニュアル化をご支援しているのですが、両者の違いについて質問いただくことがあります。
- 仕組み化って、業務をマニュアルにすることですよね?
- うちにはマニュアルがあるので、仕組み化できていると言っていいですかね?
という感じです。
どちらも部分的には正しいのですが、仕組み化=マニュアル化ではありません。一言でいえば、マニュアル化は仕組み化の一部に過ぎません。
仕組み化の具体例:ドミノピザの30分で届ける仕組みはどう出来たか?
有名なドミノピザの例を基に、仕組み化とマニュアル化の関係を見ていきましょう。ドミノピザといえば、「30分以内にお届けできなければ無料」というキャッチコピーが有名です。この仕組みはどのように出来たのでしょうか。以下の”仕組み化のサイクル”に基づき見ていきます。
①得たい結果の定義
ドミノピザは、ピザは熱々の状態で食べてもらうことが最もおいしい食べ方である、と考えました。一方、宅配にはどうしても時間がかかります。そこでまず、「30分以内に届ける」という「目的(得たい結果)」を定義しました。
②探索
では、「30分以内に届ける」という目的を実現するためにはどうすればいいでしょうか?
仕組み化の発想が無い場合には、ドライバーに道を完璧に覚えさせ、運転テクニックを上達させ、、、などのように、”人力によるガンバリ”で実現しようとします。
中には、熟達したドライバーがいて、30分以内に配達できるケースもあるかも知れません。しかし、新人が宅配したら1時間もかかる、というのでは「再現性のある仕事のやり方」とは言えません。
つまり、これは30分以内に届ける仕組みができているとは言えないのです。
いつでもだれでも30分以内に届けるためには、宅配を「再現性のある仕事のやり方」にする必要があります。
そのためドミノピザでは、「届け先に近い場所に店舗があればいいのでは?」と考え、商圏を小さくし、店舗数を増やす方法を採りました。届け先が近ければ、新人ドライバーが安全運転しても30分以内に届けられます。つまり、「再現性のある仕事のやり方」が出来たのです。
まとめると、ドミノピザの宅配の仕組みは、
- 30分以内に届けるという目的(得たい結果)を実現するために、
- 商圏を小さくした出店戦略を実施する(これは世界中で複製可能)
ということになります。
これにより、個人のガンバリに依存することなく、成果が出るようになっているわけです。
仕組み化には創造力が欠かせない
ドミノピザの例で重要な点は、30分以内に届けるという目的があったとき、それを複製可能な形でどう実現するか?というアイデアを生み出す部分です。ここには創造力が求められます。よく、仕組み化したり、マニュアル化すると社員の創造性が妨げられる、という意見がありますが、実は全く逆なのです。創造力がなければ有効な仕組みなどできないのです。
この、目的をどう実現するか?を考えることを”探索”と呼ぶことにします。
③標準化
ドミノピザは探索の結果、商圏を小さくした出店戦略を思いつきました。おそらくですが、彼らが次にやったことは、「では、どれくらいの商圏にすればいいのか」という基準を決めることだったはずです。30分以内に届けられて、かつ十分な採算がとれる商圏を導き出す必要があります。たとえば、「半径5キロ圏内に人口1万人以上」等です。このような自社独自の業務基準を定める作業を”標準化”と呼びます。
④マニュアル化
標準化が出来たら、次がマニュアル化です。先ほど決めた「半径5キロ圏内に人口1万人以上」という基準が、社内で徹底、共有されるためには文書化しておく必要があります。Aさんはその基準を知っているけど、Bさんは知らない、というのでは意味がありません。そこで「店舗を出店する場合には、商圏分析を行い、半径5キロ圏内に人口1万人以上の場所に出店すること」というような感じで文書化し、社内に流通させるわけです。これがマニュアル化です。
⑤改善
仕組み化はここで終わりません。次に改善が必要になります。改善とは、今行っている業務のやり方が実態にそぐわない場合にやり方を変更したり、もっとうまいやり方を見つけた場合に変更することを指します。また、当初の目的に変更があった場合にも改善が必要となります。
ドミノピザでは、いまは30分以内どころか、5分以内、10分以内というより高い基準を目指しているそうです。そのためには、今の仕組みを改善する必要があります。マニュアルもそれに合わせて、半径5キロ圏内ではなく、3キロ圏内に変更する必要があるかもしれません。
このように、仕組みやマニュアルは作って終わりではなく、より高い基準を目指して改善をしていくものなのです。
という感じで、仕組み化の意味からマニュアルの位置づけをご紹介してきました。
※マニュアル化の詳細については以下に詳述していますので、合わせてご覧ください。
仕組み化の方法
さて、上記ではドミノピザを例をご紹介しましたが、ここで使った”仕組み化のサイクル”を活用して、自社の仕組みを作っていく方法を見ていきましょう。
①目的の定義
最初のステップは、目的の定義です。全ての仕組みには目的があります。目的不在の仕組み化は、単に会社を官僚組織にしてしまうだけになります。会社は様々な仕組みで成り立っており、それぞれが関連しあっています。そして、すべての仕組みに個別の目的があります。
さらに、社内の全ての仕組みは、最終的にひとつの目的につながっている必要があります。その目的とは、会社の理念(ビジョン、ミッション、バリュー)です。全ての仕組みは理念を実現するためにあります。つまり、仕組みを創る場合には、それがどう会社の理念実現につながっているか、という視点を持つことが欠かせません。
具体的に例を挙げてみましょう。
ウェブデザイン会社の例
あなたが法人向けにウェブサイトデザインのサービスを提供している会社を経営しているとします。あなたのビジョンは、日本全国の1割の会社に自社のサービスを届けることだとしましょう。日本で法人組織として動いている会社数は大体50万社なので、その1割と言うと5万社になります。5万社に自社のサービスを届ける。これがあなたの会社のビジョンです。
すると、会社内の全ての仕組みは、このビジョン達成のために設計する必要があります。
現在の仕組みでは、一案件をこなすのに、一人のデザイナーが3か月かけているとします。これで1年で4件こなせます。デザイナーを20人抱えているとすると、会社全体では、年間80件がキャパシティということになります。そうなると、いまの仕組みで5万社に対応しようとすれば、625年もかかることになります。超長寿企業にならないとこれは無理です。
また、マーケティング面も考えないといけません。5万社にリーチするためには、いまのマーケティングの仕組みではとても無理かも知れません。5万社の中には、予算がそれほど無い会社もあるはずなので、価格設計も考えなおす必要があります。
では、5万社に自社のサービスを届けるにはどのような仕組みが必要でしょうか?
たとえば、
- 1案件3か月ではなく、1か月で納品できる仕組みにしたらどうか?これによって、対応スピードは3倍になりますので、ビジョン達成は208年に短縮されます。
- デザイナーの育成スピードを早める仕組みを考え、20人ではなく、40人に増員したらどうか?これによって、さらにビジョン達成は104年に短縮されます。
- サービス内容を特化させ、より安価で幅広い会社に対応できるようにしたらどうか?これによって、予算が無い会社でもサービスを受けられるようになるかもしれません。
これらはあくまで空想上の話ですが、このように創造力を働かせることこそが、起業家的な経営者が行っていることです。
私はビジネスの世界に入って早い段階で、ビジネスを構築するにあたって、ビジネスリーダーが職人的な技術に没頭してしまっていることが、大きな負債であることを学んだのです。つまり、職人的な状態であることは、失敗が運命付けられている。
ビジネスが完成したとき、どうなっているのか?という明確なビジョンがなければ、職人的な知識、マネージャー的な知識があっても、組織図の一番下のところで、枝葉末節のことを繰り返しているに過ぎません。
-ロジャー・フォード(Anthem Equity Groupパートナー・連続起業家・プロ経営者)
②目的を達成する方法を探索する
様々な思考の結果、納品を3か月から1か月に短縮することを”目的”として定義したとしましょう。これは最終的にビジョンとつながっている目的です。もちろん、これは非常にチャレンジングな課題です。事業モデルを完全に作り替えないといけないかもしれません。しかし、納品を1か月に出来たとしたら、社内的に生産性が高まるばかりではなく、お客様からも喜ばれるはずです。短納期が評判となり、自社の強みとなり、5万社にリーチするマーケティングの仕組みも現実味を帯びてくるかもしれません。
さて、ではどうやって3か月から1か月に短縮できるでしょうか?
ここから”探索”モードに入ります。
3か月の納期を1か月にするには?
ここでデザイナーを徹夜させて納期に間に合わせよう、と考えたのでは仕組み化の発想とは正反対です。繰り返しますが、仕組み化とは、「複製可能な仕事のやり方を設計すること」です。理想的には、デザイナーが悠々自適に働きながらも、1か月で納品できる仕組みを設計しなくてはいけません。
無能な将軍のもとでは、兵士がムダな血を流すことになります。有能な将軍は、まず戦わずに、つまり、兵に血を流させることなく勝つことを目指します。
同じように、社長が行うことは、社員が楽に働きながらも、成果を出せる仕組みを創ることです。
マイケルE.ガーバー著「はじめの一歩を踏み出そう」の中では、経営者が持つべき人格として、「職人」「マネージャー」「起業家」が登場します。このうち、「起業家」の人格が行うべきことが、”目的”と”探索”です。ここに創造力が求められます。
創造力が求められるので、根を詰めて目の前の仕事をこなしているだけでは、決して答えがやってきません。だから自分でなくてもできる仕事は他の人に委任し、”起業家の時間”を持つことが大切なのです。
③誰でもできるように標準化する
”探索”の結果、納期を1か月にするアイデアが見つかったとしましょう。今度は、そのアイデアを具体的に業務プロセスとして組み立てることが大切です。これが標準化です。Aさんは出来るけど、Bさんは出来ない、というのでは標準化できていません。
④標準化された業務をマニュアル化(文書化)する
そして、マニュアル化です。標準化されたやり方を文書に落とし込みます。マニュアル化することによって、全デザイナーに1か月で納品する方法を正しく伝えることが出来ます。また、新人デザイナーが入ってきた際にも、そのマニュアルに基づいて教育することで、早期に戦力化が可能になります。
仕組みが圧倒的差別化を生み出す
ここまで来ると、あなたの会社は、他のデザイン会社と比べて、圧倒的な差別化を実現していることになります。普通にやったら3か月かかるところを1か月で納品でき、教育するためのマニュアルがあるので、デザイナーを増やすこともできます。
このように考えると、マニュアルというのは、自社にとっての非常に重要な知的資産であることがわかると思います。たまに、”仕組みやマニュアルは他社のものをパクってくればいい”というコンサルタントがいますが、容易にパクれるマニュアルなど何の意味もないことがお分かりいただけると思います。
ここまで見てきて、理想論に過ぎない、と思われる方もいるかもしれませんね。しかし、社長は理想論を追求しないといけないのです。社内で誰も理想論を掲げなくなったら、その会社に未来はありません。
誰かが、ビジョンを繰り返し思い出させる人が必要なんだ。我々は着実に進んでいる。ゴールは蜃気楼なんかじゃないと言う必要がある。- スティーブ・ジョブズ
⑤絶え間ぬ改善のプロセスを回す
最後(と言ってもループするのですが)のステップは、改善です。改善とは、より良いやり方を見つけるための絶え間ないプロセスです。過去40年間、世界中のビジネスを見てきたマイケルE.ガーバー氏によれば、”どんな仕組みであってもまだ改善の余地がある”とのことです。
仕組みの改善とは、”いまと同じか、それより少ない労力で、今以上にお客様に大きな価値を提供する方法を探すこと”です。これ以外の定義はありません。言い方を変えると、インプットを減らし、アウトプットを高めるということになり、生産性を高めることと同義になります。
別の記事でも、「仕組みづくりのステップ」をご紹介しています。ぜひこちらの記事を合わせてご覧ください。
仕組み化に役立つ本
最後に会社の仕組みを作るのに役立つ本をご紹介します。世の中には「●●の仕組み」というようなタイトルやキャッチコピーを付けた本がたくさんあります。しかし、会社を仕組み化していくためのバイブルと言える本は、「はじめの一歩を踏み出そう」です。本書はこのサイト「仕組み経営」が教科書として推奨している本でもあります。タイトルからするとこれから起業する人向けに思えますが、実際には業歴5~10年くらいの経営者に読んでいただくと非常に参考になる内容になっています。
そのほかの本については以下でもご紹介していますので、合わせてご参照ください。
仕組み化に良くある質問
最後に、会社を仕組み化していくにあたって、良くいただく質問について回答していきます。
Q.「うちの会社は特殊なので、仕組み化が難しいんです」
「仕組み経営」にご相談に来られる経営者の方からよく聞く話があります。それが、
「うちの会社は特殊なので、仕組み化が難しいんです」
という話です。
ポイントは、”うちの会社は特殊”という部分です。特殊なので、私たちが公開している仕組み化の成功事例のようには簡単にいかない、というわけです。
でも面白いことに、”うちの会社は特殊なんです”という言葉は、ありとあらゆる業界の経営者から聞く言葉なのです。美容室、治療院、歯科医、そのほか専門サービス、製造業、代理店、等々。
つまり、ほとんどの経営者は、”うちの会社は特殊である”と考えているということなのです。これはある意味当たり前ですね。うちは他の会社と似たような業務しかやっていない、という経営者はいないでしょう。
たしかに、会社ごとに業務内容やビジネスモデルや人材、強みが違うので、ある種の特殊性はあるのかもしれません。その特殊性が他社との違いになり、ビジネスが成り立っているわけです。
仕組み化の方法はどの会社でも大体同じ
では、仕組み化の方法やステップは、会社ごとに違うのでしょうか?
これはNOと言えます。
業務内容やビジネスモデルが違えど、会社の経営を仕組み化していく方法やステップはほとんど同じです。なぜ、そう言い切れるかというと、私の師匠でもあるマイケルE.ガーバー氏が過去40年以上にわたって、世界中の中小企業の仕組み化を支援し、成功させてきましたが、そのメソッドはどの業界でも、さらには、どの国でも同じものだったからなのです。
人が成長する仕組みを創ることが大切
仕組み化の本質とは、業務の改革や改善にあるのではなく、人の成長にあるからです。業務内容は業界やビジネスモデル、または会社の規模によって異なるでしょう。しかし、どんな会社であっても、それを運営しているのは”人”であることに変わりがありません。
私たちがご提供している仕組み化とは、その”人”がどのように行動し、どのように動機づけされ、どのように考えるか、どのように成長していくのか?という人に対する深い理解をベースに構築されます。
より具体的いえば、どんな業界のどんな会社であろうと、
- 社員が共感する理念が必要であり
- 社員がやる気になるゴールが必要であり
- 社員同士がコミュニケーションする必要があり
- 顧客(患者)を引き寄せるマーケティングが必要であり、
- 投資家や銀行家を納得させる計画が必要です。
そのため、業務内容が変わっても、方法やステップは同じなのです。
経営者の方が「うちの会社は特殊だ」というときには、業務の特殊性を言っています。しかし、人が会社を動かしている以上、業務の特殊性は仕組み化の方法やステップに影響を与えるものではありません。
この質問についてはポッドキャストでも回答しておりますので、合わせてご視聴ください。
Q.「仕組み化、マニュアル化に反発する社員がいますが、どうしたらいいでしょうか」
会社を仕組み化していくことは社長一人ではできません。社員全員の関わりが必要になります。一方で、仕組み化、マニュアル化を進めていこうすると、社員からの反発が起こりがちです。これまでの仕事のやり方を変えたくないため反発が起こるのです。そこで、社員全員にとって仕組み化がどのようにメリットをもたらすのかを説明する必要があります。
人依存から仕組み依存への変革は文化の変革
まず社長が知っておかなければいけないのは、会社を人に依存する経営から仕組み依存へ変革させていくことは、会社の文化の変革でもあるということです。たとえば、過去、良品計画は西武時代の文化を引きずり、人依存で経営をされていました。”俺についてこい”的なリーダーが多く、店舗ごとに運営方法がまちまちで、人の育成もうまく行っていませんでした。そこで仕組み依存へと文化を変革させることで、V字回復を実現しました。その象徴として出来上がったのが、有名なMUJIGRAMです。
MUJIGRAMの詳細はこちら:
よく言われているように、この文化の変革は簡単ではありません。特に会社が大きくなればなるほど難しくなります。私たちはいつも、仕組み化に取り組むのは早ければ早いほど良い、とお伝えしていますが、その理由がコレです。社員数が増えれば増えるほど、文化変革は難しくなるのです。
ビジョンと現実のGAPを示し、仕組み化の必要性を説明する
まず何より大切なのが、会社のビジョンを改めて説明することです。あなたの会社は将来どうなりたいのか?どのような価値を社会に提供したいのか?という青写真です。これを改めて社員に説明します。
そのうえで、現状はどうなっているのか?を理解してもらい、ビジョンと現実のGAPを埋めるために仕組み化が必要であることを理解してもらいます。
たとえば、将来のビジョンとして、日本全国に拠点や店舗を展開し、より多くのお客様に自社の商品やサービスを提供していきたいというビジョンがあったとします。一方で現実はどうなっているのか。今ある店舗は店舗ごとに運営方法がバラバラであったり、人が育つのに時間がかかりすぎていたり、、、というような課題があるはずです。それらの課題を解決し、GAPを埋めるには仕組み化を進め、店舗の運営方法を統一し、マニュアルを整備し、人の育成の仕組みを整える必要があります。そのようなストーリーを語るわけです。
また、別の例としては、永続する会社を創りたいというビジョンでも良いでしょう。100年後も200年後も存続し、社会に価値を提供し続ける永続する会社を創りたいというのがビジョンです。では現実はどうか?業務や意思決定の多くが創業者の勘と経験に依存しています。これでは社長の働ける寿命=会社の寿命となってしまい、永続する会社ができません。その課題を解決するためには、社長の仕事をメンバーに委任していき、チームで経営していく組織にしていかなければいけません。また、単一の商品やサービスに依存するのではなく、時流に合わせた商品をサービスを開発し続ける仕組みが必要だということを組織全体に共有するわけです。
個人的なストーリーを語る
さらに、社長の個人的なストーリーを語ることが大切です。先述したように、ビジョンと現実のGAPを埋めるために仕組み化が必要であることを伝えるわけですが、これはどちらかというと理論的な話です。これだけでは社員の感情に訴えることができません。そこで、社長が体験した個人的なストーリーを語ることで、より感情に訴える説明が出来ます。
たとえば、属人的な経営をしてきたことで顧客や社員が不利益を被った体験や創業時の想いなどがそれにあたります。
一例として、人依存から仕組み依存への変革を実現したリフォーム会社のストーリーを以下に紹介させていただきます。
顧客、社員、会社にとっての仕組み化するメリットを説明する
仕組み化によって、顧客、社員、経営陣、(株主)にとってメリットがあることを説明します。本記事の冒頭に挙げた仕組み化によるメリットを参照されてください。
経営陣やリーダーの仕事を説明する
仕組み化の計画を共有していくと同時に、経営陣やリーダークラスの本来の仕事とは何か?を組織内で共有する必要があります。そして、その本来の仕事に集中するためには仕組み化が必要であることを伝えます。経営陣やリーダークラスの仕事は、会社のビジョンに向けて戦略や計画を立案し、それが実行されるようにサポートすることです。日々の営業や事務処理、顧客対応に忙しくしていては、そのような仕事に集中することができません。現場仕事を仕組み化し、ほかのメンバーが責任感を持って担当できるようにする必要があります。
また、ある程度仕組み化できると、ほぼ間違いなく、経営者やリーダークラスの仕事は楽になり、現場で仕事をする時間が減ります。そうなった際、ほかの社員から、”社長やあの上司は何も仕事していないのに高い給与をもらってズルい”というような悪評が立つことがあります。戦略や計画の立案は会社にいなくてもできます。だから、社長が会社に来ていないからと言って、仕事をしていないわけではないのです。しかし、社員にはそれがわかりません。”現場で仕事をしていない=仕事をしていない”と認識してしまうのです。このような悪評が立ってしまわないように、組織全体で経営者やリーダーの仕事とは何なのか?が共有することが大切です。
仕組み化の意味を説明する
仕組み化という言葉の意味を社内で統一し、共有することは、仕組み化を進めていくにあたって決定的に大切です。ここがずれると、”仕組み化をしていこう”という号令をかけても、みんながバラバラに行動しだします。ですので、仕組み化の計画づくりの前に、仕組み化という言葉の意味の統一をしておきましょう。これも本記事の冒頭に記載した仕組み化の定義をご参照ください。
仕組み化の計画を説明する
ビジョンを掲げ、仕組み化を進めていくことを告げたら、より具体的に、何をどう仕組み化していくかの計画も伝えます。計画がなく、単に仕事を仕組みにしていけ、と掛け声をかけても何も始まりません。
仕組み化に貢献することが評価されることを伝える
最後に、仕組み化に取り組むことが人事上の評価につながる仕組みにしていくことが大切です。これがなければ、仕組み化やマニュアル化というのは、社員にとって余分な仕事でしかありません。仕組み化に関連する項目、たとえば、業務の標準化やマニュアル化に取り組むことを評価項目や個人目標に入れることです。
仕組み化するなら仕組み経営
以上、本記事では仕組み化について解説してきました。何か参考になる点を発見していただければ幸いです。私どもでは、本記事でご紹介した内容に基づき、中小・成長企業の仕組み化をご支援しています。詳しくは以下のガイドブックからぜひご覧ください。