夢を現実に変えるのは、4つの人格が織りなす「仕組みの力」です。
夢を実現させるには、ただ強く願うだけでは不十分です。どんなに情熱があっても、行動に落とし込まれなければ、理想はいつまでも絵空事のままです。逆に、仕組みだけを追求すれば、そこに心が宿らず、人が動かなくなります。夢と仕組みは、まるで車の両輪のような関係にあり、どちらかが欠けても前に進むことはできません。
夢を仕組みに変えるためには、起業家としての4つの人格を意識し、それぞれの役割を自覚的に果たす必要があります。
まず、「ドリーマー」の人格です。これは、“何をしたいのか”を生み出す役割です。誰もまだ気づいていない未来の可能性に目を向け、「こんな世界を創りたい」という理想を描く人です。このドリーマーがいるからこそ、事業は生まれます。
しかし、理想を語るだけでは空論で終わってしまいます。そこで登場するのが、「シンカー」の人格です。これは、“どうやって実現するか”を考える役割で、現実的なビジネスモデルを組み立てる人です。どんな顧客に、どんなサービスを、どのような仕組みで提供するのかを論理的に設計します。とはいえ、シンカーの考えが強くなりすぎると、挑戦する前から諦めてしまう危険もあります。だからこそ、ドリーマーとシンカーはバランスが重要です。個人の中で両方の人格を持てれば理想的ですが、たとえば本田宗一郎氏と藤沢武夫氏のように、役割分担することでも補えます。
次に、「ストーリーテラー」の人格が必要です。これは、“なぜそれをやるのか”を周囲に伝える役割です。ドリーマーが感じた情熱や直感は、他の人には分かりにくいものです。社員が「社長の言ってることはよくわからない」と感じるのは、そのまま伝えているだけだからです。ストーリーテラーは、夢や構想を共感を生むストーリーに翻訳して伝えます。マーティン・ルーサー・キング牧師のように、言葉の力で人の心を動かすのです。
そして最後に、「リーダー」の人格があります。これは、“実行する”役割です。どんなに素晴らしい構想があっても、誰かが実行に移さなければ何も始まりません。リーダーは、チームを率い、道筋を示し、困難を乗り越えながら目的地に向かって進みます。この役割は、起業家自身が担ってもいいし、他の信頼できる実行責任者を置いても構いません。重要なのは、動かす人間がいることです。
夢を描くドリーマーの情熱を、シンカーの現実的な構想が支え、ストーリーテラーがその魅力を周囲に伝え、リーダーが実際に行動を起こす。これら4つの人格が噛み合い、毎日少しずつでも実践されることで、夢は「仕組み」として組織に根付き、現実となっていきます。夢とは、語るだけでなく、実現してこそ価値があるのです。