「帝王学の三原則」を経営に活かす方法



清水直樹
「帝王学の三原則」と呼ばれている法則があります。今日は経営者がその三原則を経営に活かす方法をご紹介します。

「帝王学の三原則」とは?

帝王学の三原則

  • 原理原則を教えてくれる師を持つこと
  • 直言してくれる部下を持つこと
  • 良き「幕賓」を持つこと

この3つが帝王学の三原則というものです。詳細は後述します。

そもそも帝王学とは

帝王学は、君主や指導者が統治や指導を行う際に必要な原則や方法を研究する学問です。その目的は、政治的な力や権威を持つ者が有効な統治を行い、国家や社会の繁栄を促進することです。帝王学は歴史的にさまざまな文化や時代で研究されてきましたが、古代東洋や古代ローマの統治者の行動や思想に基づくことが多く、その理論や原則は広く普遍的な価値を持っています。

帝王学の重要な要素の一つは、指導者の資質や能力に関する研究です。指導者は知識、洞察力、判断力を備えるだけでなく、倫理的な徳を持つことも求められます。指導者の倫理的な徳は、公正さ、賢明さ、寛容さ、信頼性などの品質を含みます。また、指導者は人間関係やコミュニケーションのスキルを持ち、リーダーシップを発揮することも重要です。

帝王学を学ぶには

帝王学を学ぶためには、さまざまな書籍や古典書が参考になります。以下の古典書が代表的なものです。

  • 『孫子』(Sun Tzu): 古代中国の軍事戦略家である孫子の著書であり、戦略やリーダーシップに関する教えが記されています。
  • 『君主論』(Niccolò Machiavelli): 16世紀のイタリアの政治思想家マキャヴェリによる著作で、政治指導者がどのように統治すべきかについて探求しています。
  • 『韓非子』(Han Feizi): 古代中国の政治家である韓非の著書であり、法家の思想を展開しています。

 

①原理原則を教えてくれる師を持つこと

原理原則は、あらゆる分野や状況において適用できる普遍的な法則や原則を指します。これを理解し、習得することは、リーダーシップや意思決定において不可欠な能力です。

私たちは日常の中で多くの経験を積み重ねますが、それだけでは限界があります。一つ一つのケースや状況を個別に学ぶことは重要ですが、それだけでは全体像を捉えることはできません。原理原則を学ぶことによって、広範な知識や経験から得られる洞察力を養うことができます。

原理原則を教えてくれる師は、その道を既に歩んできた経験豊富な人物です。彼らは自身の経験から得た知識や教訓を共有し、後進の成長をサポートしてくれます。彼らは一つ一つの事例やケースだけでなく、その背後にある原理原則を教えてくれる存在です。

様々な古典書によると、公子(君主の跡継ぎ)や若くして即位した王様には経験を重ねた国の幹部が教育係として付くことが多かったようです。

経営者に原理原則を教えてくれる師とは?

経営者の場合、ここでいう原理原則とは、経営の原理原則を教えてくれる人に他なりません。

  • 熟練の経営者
  • 先代社長

などがその師に当てはまります。一方でなかなか近くに頼れる師がいないという人も多いでしょう。その場合には、原理原則が書いてある書籍(風雪に耐えたビジネスの古典書や古代の帝王を描いた古典等)を頼るのも良いでしょう。

ちなみに私自身の話をしますと、マイケルE.ガーバー氏が原理原則を教えてくれる師に当たります。マイケルE.ガーバー氏は世界700万部のベストセラー「はじめの一歩を踏み出そう」の著者であり、「仕組み経営」のベースになっている経営理論を教えてくれた人物です。

 

②直言してくれる部下を持つこと

自分の立場が上がれば上がるほど、いわゆるゴマすりをしてくる人たちが増えます。最終的には”裸の王様”状態になってしまい、世の中の動きや市場の状態、自社の状態を正しく把握できなくなってしまいます。そのため、判断を間違い、経営不振に陥るケースは少なくないでしょう。

直言してくれる部下の役割

直言してくれる部下は、組織の成長と成功において貴重な存在であり、リーダーが的確な判断を下し、組織をより良い方向に導くことを支援してくれます。以下では、直言してくれる部下の役割とその重要性について探っていきましょう。

自分の欠点や盲点を指摘してくれる

まず、直言してくれる部下はリーダーの盲点や欠点を指摘する役割を果たします。リーダーは組織のトップとして多くの責任を負っていますが、常に全てを把握し、完璧な判断を下すことは困難です。直言してくれる部下は、リーダーが気づいていない問題や改善すべき点を率直に指摘してくれます。彼らの意見やフィードバックを通じて、リーダーは自己成長し、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。

多様な情報や意見を提供してくれる

また、直言してくれる部下は組織の意思決定においても重要な役割を果たします。リーダーが決定を下す際には、情報や視点の偏りが生じることがあります。しかし、直言してくれる部下は自己の意見や情報を提供し、多角的な視点をもたらしてくれます。彼らの率直な意見を受け取ることで、リーダーはより正確でバランスの取れた判断を下すことができます。

透明性のある組織文化を作れる

さらに、直言してくれる部下は組織内のコミュニケーションと信頼の構築にも貢献します。部下が率直な意見を述べる文化がある場合、他のメンバーも自由に意見を出し合うことができます。これにより、組織内のアイデアの共有や問題の解決が促進されます。また、リーダーが直言してくれる部下に対して開かれた態度を示すことで、組織内の信頼関係も強化されます。部下はリーダーが自分たちの意見を重視し、真剣に受け止めてくれると感じることができます。

直言してくれる部下を得るには?

では直言してくれる部下をどう得ればいいでしょうか。

まずリーダーが心を開く

直言してくれる部下を育てるためには、リーダーのオープンマインドが重要です。リーダーは自分の意見に固執せず、異なる意見や考え方を柔軟に受け入れることが必要です。また、部下に積極的に意見を求め、自由に発言できる環境を整えることも大切です。

信頼関係ありき

さらに、信頼関係の構築が欠かせません。部下が素直に意見を述べるためには、リーダーがその意見を尊重し適切に対応することが必要です。リーダーは部下の意見を真剣に聴き、建設的なフィードバックを提供することで成長を促すことができます。

モノが言いやすい文化を作る

また、オープンなコミュニケーションの文化を築くことも重要です。組織内で意見や情報を自由に共有することで、部下は積極的に自分の考えを表明し、リーダーとの対話を通じて相互理解を深めることができます。リーダーは部下とのコミュニケーションを積極的に行い、部下が直言しやすい環境を整えることで、彼らの意見を引き出しやすくすることができます。

 

③良き「幕賓」を持つこと

幕賓とは、帝王の側近や顧問であり、高い知識や経験を持つ人物を指します。彼らは帝王に対して助言や指導を行い、その統治や意思決定をサポートする役割を果たします。かつての有力者は、「食客」と呼ばれる学者や見識者をお金で雇い、自分の周りに置いておくということがありました。そして、様々な意見を募ったり、争乱のときには戦略立案のアドバイスを受けるなど、”幕賓”を活用していました。

幕賓の役割と効果

幕賓を周りに置くことで以下のような効果があります。

知識の提供

まず第一に、幕賓は帝王に対して豊富な知識と専門性をもたらします。統治者は様々な分野において意思決定を行う必要がありますが、すべての分野において専門的な知識を持つことは困難です。幕賓は経済、外交、法律、軍事などの分野において豊富な経験と知識を持っており、帝王に対して的確な助言を提供することができます。彼らは専門的な視点から問題を分析し、最良の解決策を示すことができます。

客観的な意見の提供

第二に、幕賓は帝王に対して客観的な意見を提供します。帝王は一人で多くの決定をしなければならず、その中には重大な政治的な判断も含まれます。しかし、孤立して意思決定を行うと、主観的な視点や個人的な感情が判断に影響を及ぼす可能性があります。幕賓は帝王に対して客観的な視点を持ち込み、利益やリスクを分析し、合理的な判断を行うことができます。彼らは感情にとらわれず、帝王に真実を伝えることができる重要な存在です。



帝王を成長させる

さらに、幕賓は帝王の学習と成長を促進します。統治者は常に学び続ける必要があり、新たな知識や洞察を得ることが重要です。幕賓は帝王に対して最新の情報やトレンドを提供し、新たな視点やアイデアを示すことができます。彼らは帝王の知識や視野を広げ、リーダーシップの能力を向上させます。

会社における幕賓とは?

現代の会社においては、社外取締役や外部コンサルタントなどが幕賓として挙げられるでしょう。ただ、そういった人物を囲うには当然ながらお金がかかりますので、同じ経営者仲間でコミュニティを作り、幕賓の役割を担いあうのも手でしょう。

 

「帝王学の三原則」を経営に活かす

以上、「帝王学の三原則」について見てきました。これら原則を経営に活かすには、何よりもリーダーがオープンな心で人の話を聞くこと、そして、最終的に自分で意思決定し、行動に移す胆力を持つことが大切でしょう。

 

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