中小企業が失敗する理由

中小企業経営の原理原則【誌上セミナーvol.1】



清水直樹
中小企業経営の原理原則とは、会社が持続的かつ効果的に経営されるための基本的なガイドラインです。そこには、正しい人間理解、自然の法則の理解、会社とビジネスオーナーの関係性の正しい理解などが含まれます。本記事では、マイケルE.ガーバー氏が過去に行った講演内容を一部書き起こしたものをご紹介していきます。講演が行われたのは1980年代~1990年代と古いですが、その内容は今でも普遍的です。ガーバー氏の基本的考え方である経営の原理原則が集約された講演内容となっていますので、ぜひお役立てください。
マイケルE.ガーバー氏・・・世界700万部のベストセラー「はじめの一歩を踏み出そう」の著者であり、世界No.1の中小企業アドバイザー(米INC誌による)に選ばれた。当サイト「仕組み経営」のもとになっている思想を提供してくれた人物。詳細はこちら>>
(以下、1980年代のマイケルE.ガーバー氏の講演内容)

サマリー

  1. 中小企業が失敗する根本理由:大半の会社が10年で倒産する理由
  2. 起業家の神話: 技術的なスキルがあればビジネスを成功させられるという誤解。
  3. ビジョンの重要性: トーマス・ワトソンのIBM成功へのアプローチとビジネスの青写真の必要性。
  4. ターンキー革命: レイ・クロックによるマクドナルドの革新的なモデルとその成功要因。
  5. 自分がいなくても回るシステムの構築: ビジネスを成功させるための仕組みの重要性。

経営の原理原則①:どうして経営が失敗するのか?

100万社もの新しいビジネスが毎年立ち上げられる。米国のビジネス動向を追う者によれば、これら新しいビジネスのうち80万社が5年以内につぶれるという。あなたはほっと安堵のため息をついて「その期間は過ぎている」と思ったかも知れない。しかし、残りの20%のうち、80%は次の5年間に倒産する。つまり最初の5年間につぶれなかったのなら次の5年間で確実と言っていいほどつぶれる。

そして10年間を無事に切り抜けた者も安堵のため息はつかないでいただきたい。なぜなら世間を見回して、ビジネスを12年間、14年間、20年間と続けている者たちに会ってみれば、彼らが会社をつぶしてしまった人たちと、まったく同じやり方でビジネスを営んでいることに気づくはずだから。

唯一の違いは今や彼らがこのうえなく皮肉屋になっているということだ。 彼らはビジネスをジャングルと考えている。敵がそこら中にいて、どこに出口があるのかわからないと考えている。良い人々を見つけることも引き留めておくこともできないと考えているのだ。だから遅く出社し、早く帰宅して、夕食時には酒を飲んでいるのだ。銀行は最低だと考えている。経済は最低だと考えている。何も変わりはしないと考えている。他人が入ってくれば、叩きのめされると考えている。

だから家を出るまえに家族を叩きのめし、オフィスに来たら自分の部下を叩きのめす。午後には銀行員を叩きのめし、朝には顧客を叩きのめし、誰も彼をも叩きのめす。夜遅くに帰宅すると、酒を飲んでテレビを観るのだけがリラックスする方法だ。腰を落ち着けニュースを見てリラックスする。彼らの人生はどんどんきつくなる。言っていることが分かるだろうか?

経営者同士の会合に出かけては、互いに語り合って、他のみんなもひどい状況にあることを理解する。そして少しは安心する。

「誰もがそう言っている。これがビジネスだと。おれもそんなに悪い状況にあるわけではないんだ。あいつを見てみろ!」

本来経営は失敗しないものである

これからお伝えしたいのは、そういった失敗は、完全に不要なものだということだ。ここで言う失敗とは、ビジネスから得ることができるはずのものを得ることに失敗することだ。失敗は蔓延していて、継続して何度も何度も繰り返される。誰もが同じ間違いを犯す。そして少数の例外を除けば、彼らのビジネスにおける経験年数は関係がない。

だから、これからどうしてそんなことになるかを理解するのに役立つ物の見方をお話しする。どのようにやればいいかではなく、何をする必要があるかをお話する。何をする必要があるかを理解できたら、今度はどのようにやればいいかに注意を集中できる。

多くの人は自分がしていることが正しいと考えている。しかし、自分が間違ったことをとんでもなく効率的に行っているかもしれないと気づいている人はどれだけいるだろうか?次から次に間違ったことを効率的に行っているのだ。だからまず、何をする必要があるかを知らなくてはならないのだ。そうでなければ、間違ったことを効率的に行ってしまい、失敗するのだ。正しいことに注意を向けていなければ、効率性は重要な問題ではない。むしろ、効率性が高ければ高いほど、失敗へと近づくのだ。

魚は頭から悪臭を放つ

事業は好況時も不況時も成長できる。中小企業のオーナーがよく言うのが、資本に問題を抱えている、十分な資本がない、もっと資本があればできるのに、ということだ。あいつが自分の部下でなかったら、もっといい人を見つけられたら、でもそんな人を雇う金はない、だから無理だ、と。あいつが自分のパートナーでなかったなら、それだけですべては変わるはずだと言うのだ。

人々は自分の外側にビジネスが抱える問題の原因を見つけようとする。しかし、真実は、ビジネスがうまくいかない理由は自分の外にはありはしないということだ。あなたの国で、世界中のビジネスがいつも失敗する理由、ビジネスが持つ真の可能性に到達する前に失敗する理由は、1つしかない。ビジネスのあらゆる問題、失敗の原因は、ビジネスのオーナーであるあなた自身なのだ。

まずお伝えしたいのは、自分が直面するあらゆる問題の責任を受け入れるということだ。シチリア人の友人が、シチリア語の言い回しを教えてくれた。

「魚は頭から悪臭を放つ」

意味がわかるだろうか?

これは、ビジネスで問題にぶつかれば、それは自分が問題を作ったということだ。人間関係の問題にぶつかったなら、それはあなたが人の扱い方をわかっていないからである。経済的な問題なら、お金について何も知らないからである。マーケティングの問題なら、マーケティングを理解していないからである。顧客の問題なら、顧客を理解していないからである。製品の問題なら、製品を理解していないからである。外の世界とは全く無関係なのだ。

会社のトップである、あなたに問題があるのだ。

いつでもどこでも素晴らしい会社は存在する

どういう場面でも、これは真実だと私は感じている。今、経済はぼろぼろだが、このぼろぼろの経済の中でも、素晴らしい業績を上げているビジネスを見つけることが出来る。「カナダでは消費税のせいで、あるいはこれのせいで、あれのせいで、みんな国境を越えてアメリカに買い物に行くので小売りではお金が稼げないのです」と言う小売店がある。

しかし、同じ小売業でも、できないと愚痴をこぼしている小売店のすぐとなりで、急成長する小売店も存在するのだ。

このような現象はどう説明すれば良いだろうか?

ビジネスの失敗は、外部環境とは無関係なのだ。問題は私たちの中にある。そしてこれは最も大事なことだが、私たちが学ばなければならないと思っている、どの技術とも関係がないのだ。それよりも「ビジネスとはどういうものであり、どういうものでないのか。私は誰であり、誰でないのか。ビジネスと私との関係はどうあるべきか。自分が達成したいのは何なのか」という私たちの考え方と深い関係があるのだ。

ビジネスを間違った方法で立ち上げるならば、必ずや望む方向と正反対の結果になってしまう。そのビジネスのために今までの人生を失い、週7日、1日12時間働き、忙しい、忙しいと言っている。トンネルの出口の光は絶えず見えているけれど、電車がその方向に進んでいるのかもわからないという状況になってしまう。

ビジネスオーナーは考え方を変えることが必要だ。そうすれば、ビジネスは後からついてくる。オーナーが考え方を変えずに、ビジネスを変えようとしても、決して、ビジネスは姿を変えることはない。だからあなたの考え方を変えたいのだ。

経営の原理原則②起業家の神話

こんなに多くのビジネスがつぶれるのはなぜか? ビジネスを素晴らしいものとして経験している者がこれほどに少ないのはなぜか? 自分がしていることに真に情熱をそそいでいる者がこれほどに少ないのはなぜか? なぜこれほどまでに喜びが感じられないのか?

ほとんどのビジネスが情熱を殺してしまうのはなぜか? 仕事に行くのが好きな社員がこれほど少ないのはなぜか? なぜ「いい人が見つからない」のか。いい人が見つかっても引き留めておくことができない。明けても暮れてもビジネスにおいて経験するあらゆる問題はどうして経験しなくてはならないのか? 人のエネルギー、想像力、力、信念を吸い取ってしまうビジネスがあるのはなぜか?



それらの原因は「起業家の神話」としてまとめることが出来る。世の中においてビジネスを手がける者は、皆が考えるような起業家ではないのだ。実際のところ彼らは想像しうる限り起業家からは最も遠い人たちだ。そしてそれが問題だ。起業家でないなら彼らは何者なのか? 言わせてもらえば、彼らは「起業家的発作」を持った職人なのである。ここで言っているのは、大工は工事請負業者になり、会計は会計ビジネスを、プードルの床屋はプードルの床屋ビジネスを始め、自動車整備士は自動車修理工場を始めるということだ。会計士が経理事務所、医師が病院、弁護士が法律事務所、機械工が機械工場を、である。

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経営は専門技術や知識とは関係が無い

これが一般的に考えられている、起業である。彼らは、ビジネスの技術的側面に習熟しているから、その技術を使うビジネスを構築できると信じているのだ。髪を切ることができれば、美容室を経営できる、車を修理できれば、修理工場を経営できる、と信じている。

しかし、ここで言っておきたい。

「ビジネスの技術的側面に習熟しているから、その技術を使うビジネスを構築できる」とは真実の真逆である。たいていのビジネスの基礎の背後にある致命的な思い込みなのだ。実をいえば、ビジネスの技術的な仕事ができないほうがうまくいく。自動車整備士はプードルの床屋を手伝ったほうがうまくいく。

なぜか? 仕事ができないからビジネスの構築方法を学ぶ必要に直面するからだ。

どれだけの人が、自分が技術的仕事をひたすらに、本当にひたすらに行っていることに気づいているだろうか。ここで言っている、行うというのは、ビジネスにおいて行う必要のある単調な作業を行うという意味だ。作って、売って、発送して、作って、発送して、電話に出て、顧客に応対して、売り込みの電話をすることだ。あなたはそういった一日を送っているだろうか?送っていなければ、素晴らしいことだ。なぜ素晴らしいのか、理由がわかるだろうか?

経営の原理原則③ビジョンの必要性

ここでIBM創設者のトーマス・ワトソンについてお話ししたい。IBMはすでに成功している会社だ。

中小企業を所有・経営している人たちにIBMの話をすると、こいつは少しおかしいのではないかという顔をされる。「何のためにIBMの話などするのか? うちはIBMではない。IBMになりたいわけではない。IBMは巨大企業で、うちは中小企業に過ぎない。巨大企業になるつもりなどない」というわけだ。

しかし、IBMとあなたたちの間にはまったく違いはない。IBMが持つ売上、資産は、いくつかの国より大きいくらいだ。

トーマス、どんなふうにやったんだ?と聞きたくならないだろうか?

トーマスはあなたと同じように、朝起きて、朝食を取って、仕事に行って、私たちが一緒に働いているのと同じような人たちと働いた。同じように自然の力に対処し、私たちの間にも経験した者がいるような大きな不況や景気後退をくぐり抜けたのだ。

しかし、あの男はどうやったのだろう? トーマス、いったいどうやったんだ?

誰かの質問に答えて彼は次のように言った。

IBMが成功した理由

IBMでわたしは3つのことをした、と。これは重要なことだから書きとめて欲しい。トーマス・ワトソンがしたのは、単に人々が集まるビジネスをつくったということではない。彼がしたことのエッセンスこそが重要なのだ。

ビジネスは最終的にどうなるのか?

IBM創成期においてトーマスが最初にしたのは、ビジネスが最終的にできあがったときにどんな姿をしているかの青写真を持つことだった。彼はビジネスが最終的にできあがったときにどんな姿をしているかの青写真を持った。あなたも自分に対して問いかけて欲しい。自分のビジネスが最終的にどんな姿を取るのかを。

言わせてもらえば、この問いに返答できたビジネスオーナーにいまだかつて出会ったことがない。ビジネスは最終的にどんな姿を取るのか? ビジネスが最終的にできあがったときにどんな姿をしているかの青写真を持たないなら、ビジネスは決してできあがらないのだ。

「起業家的発作」を病む者は額に汗する労働を受け取る。なかにはマクドナルドの店員ほどの所得も得られない者もいるが、彼らはそれを受け入れる。なぜならば、そのビジネスは彼らが額に汗して運営してきたものだからだ。だから労働を受け入れざるをえないのだ。

どんな人が必要なのか?

さて、トーマスが第2にしたのは、ビジネスが最終的に、青写真に描いたような姿になるならば、それを実現するための能力を持っている人がどれだけ必要なのかを考えた。

あなたはあのIBM創設者たちの姿を知っているだろうか。ダークスーツ、糊の効いた白シャツ、黒光りするウィングチップシューズを身につけた彼らは、熱狂的で他に類をみない販売会社だった。世界を見回してもあのようなことをした者は他にいない。

いったいあのような人たちはどこから現れたのか? 誰もが言うのだ。「あのような人たちはどこにいるのか、トーマス・ワトソンよ」と。あのようなひらめきを持った人たちをどこで得ることができるのか?

IBMは銀行家よりも銀行業について知っていた。IBMは配給業者より配給業について知っていた。小売業者より小売業について知っていた。サービス業者よりサービスについて知っていた。そんな人たちをどこで見つけてきたのか?

そしてIBMは典型的なサービスビジネスである。分類上は製造業者であり、自分を製造業者と認識してはいるが、開業以来つねにサービスに重点を置き続けてきた。彼らは 作業にではなく最終結果に集中してきた。作業ではなく結果に、である。作業ではなく結果に集中したのだ。だから行った作業、行っている作業が、彼らを他の皆から完全に差別化したのだ。

最終的な姿と現在の姿の差を埋める

IBMで第3に彼らがしたのは、ビジネスが最終的にできあがった姿と現在の姿の差を埋めることだった。彼らは、実際には大企業と中小企業の間に何の違いもないということに気がついた。大企業とは、正しいことをしてきた中小企業だ。彼らは頭のなかのイメージを現実にするべくIBMで働いた。彼らは、1日ごとに自分たちがどれだけうまくやっているか、そして、目標を達成するためにどれだけうまくやる必要があるかを振り返り、理想と現実の差異を測ったのだ。

ビジョンがなぜ必要なのか?

ところで、どうしてビジョンが必要なのか?ビジョンとは一体何なのか?ビジョンというのは言葉ではない。ビジョンとは、実現しようとすることを心の中に抱く個人の能力のことである。心の中で、実現しようとすることのイメージを抱かなければ、どんな仕事をしても、日々のルーティンの領域から脱することはない。働いて、働いて、忙しい、忙しい・・・でも何のために?優れたキャンペーンをやり、優れたセールをやり、いい社員を採用し、、素晴らしいことをしたことで、一時的な満足を得るかも知れない。

しかし、それは、真の意味で自分の目的、目標に近づくというよりも、自分のビジネスからわずかに得られるものを得ているだけなのだ。自分たちの使命は何なのか、目標は何なのか、自分たちはどこに向かっているのか、何が必要なのか、何のためにビジネスを作り出しているのか。



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経営の原理原則④普通の人を活躍させる

本来のビジネスは、オーナーがそこに介入しなくても成長する。あなたのビジネスが、あなたの介入を必要とするなら、ビジネスのせいで好きなときに好きなことができないなら、ビジネスによっていつでも自分の望むことができるようになっていないならば、あなたのビジネスは、これまでの結果と全く同じ結果をこれからも出し続けることになる。ということは、私たちはビジネスにおいて間違ったことに注力しており、変えなければいけないことがあるということになる。

トーマス・ワトソンは、ビジネスの先を見通す力を持つ人の典型例だ。その力が、あらゆる素晴らしいビジネスと、それ以外のすべての差になって現れる。ビジネスの先を見通す力を持つ人は、非常に珍しい人ではあるが、その能力は誰でも手に入れることができる。なぜなら、あなたは起業家精神を持っているからだ。

問題は、私たちの起業家精神が眠っていることである。いつも会社に行き、やらないといけないことをやることで一日を終えてしまう。常にすべき事に追われている。本当になすべきことをするために一日を過ごしているのではなく、一日を終えるために仕事をしているようなものだ。これをやって、あれをやって、これをやって、あれをやって。果たしてそれが本当に重要なことだろうか?

自分がいなければ一日の仕事が終わらない。ビジネスが私に依存しているからだ。おそらくあなたはそう言うだろう。しかし、あなたに言いたい。

ビジネスがあなたに依存しているなら、もしあなたがそこにいなかったらどうなるのだろうか?

もしあなたが今日、会社に行かなければどうなるのだろうか?

レイクロックが起こした革命

もう一人、レイ・クロックという素晴らしい人の話をしよう。あなたはレイ・クロックをご存じだろう。マクドナルドの創業者である。いや、正確には、マクドナルドを創業したのではなく、ミキサーを作っていた。レイはマクドナルドの真の創業者であるマクドナルド兄弟に、麦芽と牛乳のマルチミキサーを売るため、サンバルディーノへと出かけた。レイは、そこで見たものに衝撃を受けたのだ。彼はそれが信じられなかった。それは並外れたビジネスだった。レイはすっかり魅了され、フランチャイズ権を譲ってもらおうとマクドナルド兄弟を説得した。

しかし、兄弟にとってはレイなんて必要ではなかった。兄弟は、そんなことよりも、ハンバーガーを作るのに忙しかった。それにマクドナルド兄弟は、レイ・クロックが知らないことも知っていた。実は自分でもフランチャイズをやってみて失敗しているので、レイはマクドナルドのフランチャイズを成功させられないだろうということだ。こうして兄弟はレイにフランチャイズ権を譲り、レイ・クロックはイリノイ州デスプレーンズに向かい、最初のハンバーガー店を開業するために借金をした。

レイはハンバーガーショップの開業資金を借りた。この瞬間、彼は、私の国に、あなたの国に、そして世界中に広がるビジネスの第一歩を踏み出したのだ。これはビジネスにおける卓越した、全くユニークな革命だった。この革命を「ターンキー革命」と呼んでいる。

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ビジネスそれ自体が商品

レイ・クロックが最初のマクドナルドハンバーガーの店舗を開業したとき、自分ではハンバーガーを作らなかった。フライドポテトも作らなかった。ミルクシェイクも作らなかった。レイ・クロックにとっては、最初のマクドナルドハンバーガーの店舗は大量生産品の試作品だったからだ。だから彼はハンバーガー店には出勤しなかった。ヘンリー・フォードが最初のT型フォードを大量生産品の試作品として見ていたように、レイ・クロックは最初のマクドナルドハンバーガーの店舗を大量生産品のひとつとして見ていた。

レイ・クロックは、産業革命の原理をビジネスに初めて適用した。レイ・クロックは、ハンバーガーやフライドポテトやミルクシェイクが重要なのではなく、ビジネス自体に本質があると考えていた。あなたはマクドナルドに行ったことがあるだろうか。マクドナルドで購入するものは、実際のところどれも、商品ではない。ビジネス自体が商品なのである。

レイは、彼にとっての最も重要な顧客とは、フランチャイズ加盟者であると考えていた。レイは、世界中に何百万店舗にも広げていく展望を持っていた。ある意味、レイは厚かましかった。今はまだハンバーガー店は1店舗だけれど、いつか月にまで出店してやろうと考えることができたのだ。ビジネスを拡大するためには、彼のもとにフランチャイズ加盟者が集まらなければならない。このように、レイ・クロックのビジネスは、他のハンバーガービジネスと競争するのではなく、他のビジネスチャンスと競争していたのだ。

レイクロックが売っていた2つのもの

レイは「ハンバーガービジネス」という業界にいたのではなく、「ビジネスチャンスを提供するビジネスをしていたのだ。だから彼がすべきことは、他人よりも優れたビジネスチャンスを作ることだった。レイはフランチャイズ加盟者のことを理解していた。フランチャイズに加盟しようという人、つまりレイの顧客は、どんなビジネスであるのかということは気にせず、ビジネスに対して、2つのものを望んでいたのだ。その二つとは、安全と独立である。

通常、独立しようと思ったとき、安全が手に入ることは無い。安全を諦める代わりに、独立を手にするのである。または、安全を手にしようと思ったとき、独立が手に入ることは無い。

しかし、レイの作ったフランチャイズシステムは異なる。彼のフランチャイズでは独立と安全が同時に手に入るのだ。レイ・クロックはこう言った。

「私のフランチャイズに加盟すれば、一定の独立と安全を享受できる。他のビジネスではなく私からビジネスを買うのだから。そして、いったん買えば、成功すると保証できるから」

普通の人をハイパフォーマーに変える

レイ・クロックは、仕組みが普通の人たちを傑出したパフォーマーに変える手段であるということを理解していた。偉大な企業は傑出した人たちを求めているのではない。偉大な企業は普通の人たちを求めて、傑出した仕組みにより活用するのだ。なぜなら圧倒的多数の人間は普通なのだから。そうでないなら世界の人たちで真に成功する者がこうも少ない理由を説明できないではないか。

オリンピックに出場できる者がこうも少なく、1年で10万ドル以上を現実に稼ぐ者がこうも少なく、価値ある関係を真に築ける者がこうも少なく、ストレスのない人生を送れる者がこうも少なく、目標に掲げたことを本当に実現できる者がこうも少ない理由が説明できないではないか。

私たちは普通の人間なのだ。自分が普通の人間であることに落ち込んでいるかも知れない。しかし、レイ・クロックが、彼のような実業家が気づいていたのは、傑出した人たちに依存していたら大企業は築けないということだ。傑出した人たちに依存したビジネスを築いてしまったら、いつつぶれても不思議はない。

普通の興味や、普通のスキルや、普通の望みや、普通のモチベーションを持った、普通の人しか見つからないという事実を受け入れよう。それが私たちの現実なのだ。そして、普通の人を卓越した生産性を持った人へと変化させるために必要なものを、自分の会社内に構築するのだ。これは部外者にとっては奇跡と思えるかもしれないが、マクドナルドでは、明けても暮れても、変わることのない事実として行われていることだ。

ビジネスの真の目的

レイ・クロックには、ビジネスにおける最重要の言葉が何かを分かっていた。顧客に、従業員に、供給元に、貸し主に、オーナーに対して、ビジネスが提供できなくてはならない最重要のこと、1つの言葉 ——その言葉こそ「コントロール」である。世界中のどこを見ても人々はそれを渇望しているが、誰もが手に入れられないでいる。

今この瞬間にあなたに伝えようとしているのは、絶対普遍の法則である。ビジネスにおける成功の秘訣は、ビジネスにおける真の目的を理解することにあるのだ。そして、すべてのビジネスにおける真の目的とは、人々、もちろん、ビジネスオーナー自身も含めた人々に対してもっと豊かな生活を与えることであり、そのためにはコントロールが不可欠なのだ。

もしあなたがマクドナルドのフランチャイズを買ったら、マクドナルドの「成功システム」とも呼ぶべきものが与えられる。「きっとうまくいく。心配ない」と彼らは言う。レイ・クロックが創造したプロセスは、世界の企業がかつて実現できなかったほどの巨額の富を生み出した。

アプローチの違いを知る

あなたは次のように言うだろう。

「自分はハンバーガービジネスではない。」「自分はファーストフードビジネスではない」「自分は未熟者を雇わない」「自分には優秀な人たちが必要だ」



理解して欲しい。ここで言っているのは、マクドナルドのビジネスに対するアプローチの仕方が他の多くのビジネスオーナーと違うということであり、あなたが頭のなかで考えている問題は、全てマクドナルドには解決策が分かっているということだ。あなたは頭のなかで「自分はあんなビジネスにはなれない」と言っているかも知れない。

しかし、世界の卓越したビジネスは全部、あんなビジネスになる方法を見つけたのだ。そのビジネスが世の中に登場する以前は、誰も想像していなかった結果を出すことによって、偉大なビジネスへと成長したのだ。

経営の原理原則⑤自分がいなくても上手くいく仕組みを作る

私はあなたに、あなたのビジネスをフランチャイズ化しなさいという話をしているのではない。フランチャイズ化するかのように振る舞うという話をしているのだ。自分のビジネスを、5000以上もあるビジネスの試作品の1つだと考えるなら、そのビジネスに対してどのような態度で臨むだろうか。今やっているのと同じようにビジネスに取り組むことはない、というのはすぐにわかるだろう。自分がそこにいなければ回らないようなビジネスにしてはいけないことがわかるだろう。電話に出て、セールをやって、これをやって、あれをやって、床を掃除にして、壁を掃除して、在庫を把握する。そんなことは不可能なのだ。なぜ不可能かというと、自分を複製することはできないからだ。

どうして自分と同じような人を見つけることができないのか。これはみんなが言うことだ。なぜ同じことをスタッフに42回も言わなければならないのか。そんなことなら自分でやって、自分の分の給料を払い、従業員には自分がやるところを見せておけばいい、と考える人はいないだろうか。うちの会社でもそういった観客に給料を払っているぞという人がいるかも知れない。

ビジネスを俯瞰して捉える

さて、いつも正しく働く、完璧な仕組みを作り出すためには、ビジネスの中で働くのではなく、ビジネスの外側から働く必要がある。ビジネスを上から俯瞰してとらえる必要がある。そうすれば、自分でやらなくても、いつでも予想通りの結果が得られるのだ。もしそうでなければ、それはビジネスではなく、作業と言われるものになる。実際のところ、この世界に存在する大多数のビジネスは、ビジネスオーナーにとって、実は作業以上の何物でもないのだ。

なぜ、そうなってしまうのか?

間違ったスタートの仕方

その理由は、最初にビジネスを始めた時のやり方に問題があるからだ。ビジネスを始めようとする理由はたった2つしかない。

1つ目は、誰かの下で働いていて、あれこれ作業をしている人たちだ。週末に請求書を受け取り、次の週末にはまた別の請求書を受け取り、その次の週にはまた別の請求書。そして座りながら言う。「何のためにこんなことをしているのだろう」。仕事が嫌になり、上司にも我慢できず、こうつぶやく。「そうだ、この仕事、自分でやれるじゃないか。そうすれば利益は全部自分のものだ。バカな上司でもビジネスをやってるのだから」。自分のためだけに働くようにしよう。これが、上司をクビにするためにビジネスをはじめるパターンである。

もう1つのパターンでは、全く違う理由によってビジネスを始める。それは、失業だ。仕事が得られないから、自分でビジネスを始める。そして今は仕事がある。素晴らしい仕事だし、自分は自分を解雇しない。

話を戻そう。自分のビジネスが、5000以上もあるビジネスの試作品の1つであって、ビジネスの中で働くのではなくてビジネスの外側から働くのなら、頭の中に明確な目標が浮かぶだろう。このようにしてみれば、あなたは人生を選べるようになる。

ビジネスを俯瞰する

目次 第一条 Working On it, not IN it(会社の中で働くのではなく、会社の上から働く) 職人的な仕事への中毒から抜け出し、会社全体を俯瞰して革新性と拡張性を実現することが大切[…]

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ビジネスを仕組み化すれば人生を選べる

まずは、望めばフランチャイズ化するという選択だ。あなたはビジネスをスタートするときの問題をすべて解決したわけだから、同じシステムを、これからビジネスをスタートする人に提供できる。

2つめは、フランチャイズ化したくないなら、誰かあなたの代わりになる人を雇って社長にするという選択だ。その彼にシステムについて伝えれば、あなたは自由の身になれる。あなたがどこにいても、彼に仕事をしてもらえる。そして大事な数字を教えろと言って、週に一度、彼に電話するのだ。この数字を見れば、自分のビジネスがどういう状態なのかということを正確に把握できる。

ただの電話、いや、電話すらしなくてもいいのだ。システムを使って調べればいいのだ。そうすればすぐに、何がどうなっているのか、正しく運営されているのか、間違った運営がされているのかが、すぐに、正確に判断できるようになる。

こういった管理方法をイメージできるだろうか?世界中にあなたの会社が運営する小さな拠点が存在し、あなたは、そのひとつひとつに気を配る必要がない。このようなことが想像できるだろうか?

あなたが3か月不在でもうまく回るか?

マクドナルドは10年前と同じ速度で新規開店しているのを知っているだろうか?マクドナルドは成熟した業界の中で成長に成長を重ねている。彼らは各店舗をどのように動かすかを知っていて、明日何が起こるのかを知っている。

私が話していることが理解できないならば、こんなことをしてみてほしい。自分の会社に電話をする。そして、「やあ、私だ。3ヶ月間休暇を取ろうと思うんだけど、私が戻ってくるまで万事よろしく頼むね」と言って切ってしまおう。

3ヶ月後にあなたが帰ってきたら、会社が駐車場に変わっているかも知れない。従業員が会社を売り払ったのだ。

ビジネスの中で働いている限り、あなたがいなくなれば、あなたの会社は、駐車場になってしまう。

ビジネスの中で働くのではなく、ビジネスの上で働く、というのがポイントだ。これからは、この考え方を自分たちのビジネスに生かすようにしよう。起業家熱にうなされた職人であることをやめよう。この行動モデルを頭の中、心の中に浸透させ、文字通り全く新しい考え方でビジネスに取り組むのだ。

誌上セミナーの続き

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