松下幸之助の名言と経営理念

松下幸之助の名言から経営理念を確立する



清水直樹
本記事では松下幸之助氏の名言から、経営理念を打ち立てるためのヒントを見ていきましょう。

松下幸之助は何をした人か?

松下幸之助なんて知らない、という若い経営者もいるようです。そこでまずは松下幸之助氏が何をした人か、功績を見ていきましょう。

パナソニック(旧松下電器産業)の創業者

松下幸之助は1918年に松下電気器具製作所を創業し、のちにパナソニック株式会社(旧松下電器産業株式会社)の礎を築いた経営者です。家計が厳しく丁稚奉公をしながらも、電気事業の将来性に着目し独立を決意。わずか644円の資金から事業を立ち上げ、電球ソケットの製造から始めました。それ以降、事業は拡大し、日本中に系列の電器店を広げ、世界にも進出。一大企業グループを築き上げました。

日本に家電製品を広めた先駆者

松下電気器具製作所では、電球ソケットに続き、自転車用ランプ、電気アイロン、乾電池など、日本に普及していなかった家電製品の開発・製造を手がけました。画期的な宣伝手法や製品開発を行い、日本全国に家電を広めた功績があります。その背景には、「女性を家事から解放する」という想いがありました。

先駆的な経営手法の導入

松下幸之助は事業の拡大とともに、様々な先駆的な経営手法を導入しました。1933年に事業部制を実施し、1935年に分社制を取り入れて子会社9社を設立するなど、生産性向上を図りました。また1965年には日本で初めて週休2日制を導入するなど、労使関係にも着目しました。

「経営の神様」と呼ばれた理由

正しい経営理念の確立と実践を重視し、「水道哲学」「企業は社会の公器」といった独自の経営哲学を打ち立てました。経営手腕と卓越した経営理念から「経営の神様」と称えられています。また、終戦後の困難を乗り越え、再び会社を立て直す手腕も高く評価されています。

社会貢献への熱心な姿勢

創業の理念として「生産者はこの世に物資を満たし、不自由をなくすのが務め」とする”水道哲学”を掲げました。単なる利潤追求ではなく、社会に役立つことを企業の使命と捉えていました。戦後は「繁栄による平和と幸福の実現」を目指すPHP研究所を設立。さらに1980年には次世代の指導者育成を目的とした松下政経塾を開設するなど、社会貢献活動にも熱心でした。

松下幸之助と経営理念

松下幸之助は、パナソニックの前身である松下電器産業を創業し、一代で世界的企業に育て上げた実業家です。彼の経営哲学の中核には、しっかりとした「経営理念」を確立することの重要性が据えられていました。

経営理念とは、企業の存在意義や経営の目的・使命に関する基本的な考え方のことです。幸之助は「この会社は何のために存在しているのか」「経営をどういう目的で、どのようなやり方で行なっていくのか」といった点について、明確な理念を持つことが不可欠だと説いています。

経営理念は単なる理念や理想に留まらず、社会の理法や自然の摂理に基づいた、真理に かなったものでなければなりません。幸之助自身、事業経営に真摯に取り組む中で「自分には生産者としての真の使命がある」と気づき、正しい経営理念を確立することができました。

経営理念の大切さに気が付いたきっかけ

昭和7年、松下幸之助氏は、ある宗教団体を訪れた際、信者たちが喜びに満ちた表情で奉仕する姿を目の当たりにしました。この光景を目にした松下氏は、自社を振り返り、単に電気製品を作るだけでは不十分であると考えました。日用品を水道のように豊富にし、人々を貧困から救うことこそが、実業家としての自らの夢であり”聖なる事業”であると悟ったのです。真の使命を自覚した松下氏は、実際の創業から14年経った同年を、真の創業記念年「命知元年」に定めました。

そして250年かけて生活用品を無尽蔵に供給し、楽土を建設するという壮大な計画を立てました。同年5月、松下電器第1回創業記念式典を開催し、「必需品を豊富にし、生活を改善すること」が事業の目的であると宣言。式典では、従業員一同が興奮し、熱心に意見を述べる光景があったと伝えられています。

経営理念の確立が会社飛躍につながった

正しい経営理念を持つことで、強固な信念が生まれ、言うべきことを言い、なすべきことをなせるようになります。また、従業員にも使命感が芽生え、経営に魂が宿るようになると幸之助は説いています。実際、松下電器産業は経営理念の確立後に飛躍的な発展を遂げました。

さらに幸之助は、企業は社会の公器であると考えていました。企業は社会から必要とされているからこそ存在できるのであり、社会に対してプラスになるか マイナスになるかという観点から経営を行う必要があるとしています。「企業の社会的責任」として、人材育成にも力を入れるべきだと説いています。

このように、松下幸之助は正しい経営理念の確立とそれに則った経営の実践を重視し、その哲学を体現することで松下電器産業を世界的企業に育て上げました。

松下幸之助の名言から経営理念を確立する

では、以下に幸之助氏の名言や発言をご紹介していきます。これらの言葉をあなたの経営理念を確立するヒントにしていただければと思います。(主に松下幸之助発言集を参考にしています)

「企業は社会の公器である」

幸之助氏の名言の中でも最も知られたものが「企業は社会の公器」でしょう。あなたの会社は、天下の人、天下の土地、天下の金を使って経営を進めているという認識が大事です。そのため、あなたが掲げる経営理念は、企業が社会に対して果たすべき責任や役割を根幹に置く必要があります。単なる利益追求ではなく、より良い社会への貢献を目指す高い志が求められます。

赤字は罪悪

この考えから、赤字になるのは罪悪であるという理念が生まれます。天下の人を使い、天下の資金を使って事業をするにも関わらず、利益をあげていないのは罪だということです。

公人として判断をする

また、会社が公器であるとすると、経営者は公人となります。そうなると、個人的な感情で物事を判断するのではなく、公の利益のために判断下すことが出来るようになります。その判断には力強さが生まれ、社員や取引先にも信念をもって訴えかけることが出来ます。

何が正しいかに生命を賭すことが出来ないのであれば、経営者を辞したほうが良いとも言っています(松下幸之助発言集1)

「経営にもダムのゆとり」

ダム経営論も幸之助氏が提唱した重要な概念です。のちには稲盛和夫氏がこの考えを継承し、多くの会社に広まっていきました。ダム経営論とは、変事に備えて余裕をもって経営する、ということです。具体的には、1割の余裕、採算は90%にしても合うようにする、という発言もあります。

幸之助氏は例として、米国のユニオンカーバイドという会社の乾電池価格の話を挙げています。幸之助氏が訪問したとき、この会社の乾電池の価格は15セント。その価格が30年前から変わっていなかったそうです。しかもその間に二回の戦争があったにも関わらずです。幸之助氏は物価が高騰することをよしとしておらず、同社の経営に大きく関心を持ったようです。価格を維持できた要因として、ダムのようなゆとりをもった経営をしていたから、と発言しています。

「どこの会社でも経営者の思う通りになる」

会社はだいたい経営者の思ったように動いていきます。いうことを聞いてくれない社員、反発する社員がいるかもしれませんが、大多数の社員は経営者の言うとおりに動くため、経営者の思う通りになるのです。だからこそ、経営者がどう考えるかという経営理念が大事なのです。経営者の考え次第で、会社は良くもなり、悪くもなります。

トヨタの値下げ要求

このことをよく示したエピソードがあります。松下電器は、下請けいじめをする、というような批判もありますが、実のところ、松下電器もトヨタの下請けをしていたのです。トヨタの自動車に使うパーツを松下電器で開発していたのですが、その製品の利益率は3%と低い水準でした。そんなときに、トヨタから3割もの値下げ要求が来ます。

担当チームはとてもそんな要求は受けられないと考え、どうしたものかと考えていました。その時、当時会長だった幸之助氏がチームの会議に参加します。話を聞いた幸之助氏は、「トヨタの言い分はもっともだ。そもそも3%しか利益がないのがおかしい」と言ってチームを諭します。その話を聞いてチームは要求を受けることを決定し、改善に取り組みます。結果、トヨタの要求通りに値下げをし、さらに1割の利益が出るようになったのです。

このエピソードはまさに、”思った通りになる”ことを示したものだと思います。



「雨が降れば傘をさす」

幸之助氏は、たびたび「あなたが成功した経営の秘訣は?」と問われ、そのたびに特別なことはしていない。雨が降れば傘をさすようなことをしてきただけだ、と答えています。その主旨は、経営というのは当たり前のことを当たり前にやればうまく行かない道理はない、ということです。たとえば、代金をきっちり回収する、原価より安い値段で売らない、といったようなことです。これら道理に外れなければ大きな失敗はしないということなのです。

事業は必ず成功するものと考える

そして、事業というものは、大小の差があっても、やっただけは成功するものだと根本に考えることです。 経営理念として、自社の事業は成功するものだと確信を持つことが重要です。うまくいかない原因は自社の経営の在り方に問題があると考え、常に改善を求める姿勢が肝心です。

商売は必ずもうかるべきものである

会社員は一か月働いたら必ず給与をもらいます。商売をするもの、つまり経営者もそれと同じです。時に儲かり、時に儲からないと発想自体が間違いです。うまく行かなければ、どこがいけないかを研究することが大切です。

目標をかかげる経営 「経営者としての大きな任務の1つは、社員に夢を持たせるというか、目標を示すことである。」 経営理念には具体的な目標を掲げ、社員に夢や目指すビジョンを示すことが不可欠です。目標達成に向けて社員一丸となって取り組める理念でなくてはなりません。

「商品は我が娘」

幸之助氏は、製品を顧客に販売することは、愛する娘を嫁に出すようなものだと考えていました。そうすると、お得意先(お客様)は親戚になる、ということです。そのため、製品が顧客の役に立っているかどうかを常に気にかけ、顧客との間に単なる商売関係を超えた深い信頼関係を築こうとしていました。

たまには顔を出す

商品は我が娘と考えると、それが顧客の手に渡った後も、あたかも自身の娘を嫁に出したように、商品が適切に活用されているかを気にかけることになります。そして、近くにいった際にはちょっと立ち寄って、様子を聞いてみる、といった行動が生まれます。そうすることで、お客様から意見をもらうことも出来ますし、場合によっては買い替えや追加の注文をもらうこともできるようになります。

「中小企業の給料は高いのが当然」

世間一般的には、中小企業は大企業よりも給与が安いとされており、中小企業経営者もその言葉に甘んじて、大企業よりも低い給与を設定しているのではないでしょうか。しかし幸之助氏はそうは考えませんでした。なぜならば、大企業は組織や派閥などが邪魔をして社員の生産性が低いからです。そのため、社員は100ある能力の内70しかだせていない。しかし中小企業は組織も身軽で、下意上達、上意下達も容易です。そのため、社員の100の能力をすべて使うことが出来るはずです。そういった理由から、中小企業は大企業よりも生産性が高くあるべきであり、したがって給与も高く出来るのです。

「日に新たな経営」

経営は、絶えず進化し、新しいものを生み出していく心がけが大切です。実際、幸之助氏が最初に出した商品自体も他にはないものであり、特許も取得しました。その後も自ら開発にいそしみ、100件以上の特許を自ら取得したとされています(パナソニックHPによる)。これは幸之助氏が日々新しいことに取り組もうと努力してきた結果でしょう。

「世間は常に正しい」

世の中一人ひとりを見てみれば、たしかに正しいことをする人もいれば、悪いことをする人もいます。しかし、世間全体みると、その判断はだいたい正しいと見るべき、と幸之助氏は言っています。世間は鏡のようなものであり、常に神のごとき裁断を下しているとのことです。これは経営者にとって厳しい方向にも働きますが、逆に言えば、私心に囚われずにやれば、必ず認めてくれると考えることもできます。それが経営をする安心にもつながります。

「物価は下がるのが当たり前」

幸之助氏は、物価は下がり続けるものという前提に立って経営をしていました。たとえば、これまで人力で運んでいた商品を車で運ぶようにすれば、時間も労力も下がります。そのため、物価が下がるのが当たり前ということなのです。たとえ物価が上がるにしても、収入はそれ以上にあがるはず、と考えます。それが出来ていないということは、合理化すべきことが十分に合理化できていない証拠であるのです。

業界の安定性が物価の安定につながる

たとえば、業界内の一社が、自社だけ儲けようとして一気に価格を下げたとします。すると他社も追随せざるを得ません。中には倒産してしまう会社も出ますが、生き残った会社は独占的に商品を提供できるようになります。すると競争原理が働かなくなり、今度は価格を上げようとするインセンティブが生まれてしまいます。これでは物価が下がることにつながりません。物価を下げるには、業界が健全な競争、相互協力をして、業界を安定させ、物価を安定させることが大切なのです。

250年後には物資が水のように行き渡る

幸之助氏は、水道哲学を唱えたことでも知られています。これは物価が下がり続けることで、庶民が必要とする物資が水のように行き渡り、全ての人が貧困から抜け出すことが出来るという考え方です。幸之助氏は、全社集会で250年後にはそのような世界を実現すると宣言しました。

名言をもとに自社の経営理念を確立する

以上、松下幸之助氏の名言をいくつかご紹介してきました。これらを単に知識として終わらせるのではなく、自社の経営理念を確立するために役に立てていただければと思います。

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