社長の後継者育成がうまく行かない理由と正しい方法はコレ。

清水直樹
中小企業における「社長の後継者育成方法」について解説します。結論から言うと、後継者育成は、塾やプログラム、セミナーなどに頼るだけでは全く不十分です。現役の社長とともに、会社経営に真摯に取り組むことによって、後継者育成が可能になります。

 

後継者育成とは、社長の跡継ぎ(次の社長)を育成するということです。自分の代で廃業する、ということでない限り、全ての会社において後継者育成が必要になります。一方、後継者育成に難儀している会社も多いのが実態です。そこで本記事では、後継者育成がうまく行かない理由や、後継者に求められる能力、どうすれば後継者育成が出来るかなどをご紹介していきます。

後継者育成が上手くいかない理由

世の中には様々な後継者育成塾やプログラム、セミナーがあります。しかし、特に中小企業においてはこのような経営リーダーを育成する試みはなかなかうまくいっていないのが実態です。事実、近年中に後継者不在で倒産する会社は数十万社にも及ぶとされています。

その理由としては、以下のようなものが挙げられます。

①そもそも後継者を育てようとする意識がない

人生100年時代、昔であれば経営者引退迎えていた年齢に差し掛かっている人も、まだまだ現役で活躍できる時代です。そのため、自分がずっと経営していく、ということに疑問すら持っておらず、いずれ会社を誰かに引き継ぐ必要がある、という意識を持っていない社長は多いものです。当然ながらそういう会社では、後継者を育成しようという意識がありません。

②後継者候補者がいない

一方、誰か後継者を育てたいと思っても、社内に候補者がいない、というケースもあります。社員の高齢化も進み、将来を見越して会社を託せる人材がいないケースです。このような場合には、M&Aで会社をどこかに売却するか、外部から人材を採用してくるという選択肢になります。

後継者育成には、最低5年はかかると言われています。後継者不在で悩む前に、後継者育成の計画を考えておきましょう。

③後継者に求められる能力を理解していない

次に、候補者はいるけど、なかなか社長の思うように育たない、というケースがあります。このケースの場合の問題は、社長が後継者に求められる資質を理解していない、ということです。社長が自分の代わりを出来るのはどんな人だろうか?というように考え出すと、もうキリがありません。あれも出来て、これも出来て、、、というように、とても育てるのが不可能な理想の人材像になってしまいます。

④専門能力がある人を後継者だと考えてしまう

前項と関連しますが、まず知っておかなければいけないのが、「管理職には2種類ある」ということです(後継者も管理職の一種と考えます)。

1つ目の管理職は、一般社員の上司です。これを「兵の将」と言います。

2つ目の管理職は、管理職の上司です。これを「将の将」と言います。

この2種類の管理職、求められる能力が全く異なります。

将の将たるものは

中国の故事でこんな話があります。

漢王朝を建てた劉邦は、謀反の疑いで武将の韓信をとらえ、牢に入れました。劉邦は韓信に尋ねます。

劉邦:この私はどのくらいの兵を統率できると思うか?

韓信:せいぜい十万でしょう。

劉邦:では貴公は何人の将になれるか?

韓信:多ければ多いなりの将になることが出来ます。

劉邦:ではなぜ十万の将にしかなれない私に貴公が捕らわれたのか?

韓信:陛下は兵の将としての力はありませんが、将の将としての力をお持ちです。私が捕えられたのもそのためです。それに陛下の才能は天からの授かりもので、普通の人ではないのです。

この故事から得られる教訓は、武の力があれば兵の将にはなれるが、将の将になるためにはそれだけでは足らない。人徳が必要であるということです。韓信は兵の将になることはできましたが、将の将になることはできませんでした。そのため捕らわれたのです。



将の将になるためには、”兵の将”達がこの人と一緒に働きたい、というような人徳が必要なのです。

管理職の上司には人徳が求められる

この話を現代社会の会社に置き換えてみましょう。たとえば自分が料理人として腕を磨き、自分のお店をオープンさせたとしましょう。最初は自分がオーナー兼店長兼料理長ということになります。ほかにスタッフが3人ほど雇ったとしたら、自分は”兵の将”となります。

お店が成長し、もう一店舗を出そうかな、という段階になったとします。この時点で、いまのお店の店長兼料理長となる後継者を育てなくてはいけません。後継者に求められるのは、何より自分と同じ味が出せることです。同じ味が出せなければお客さんが離れてしまい、ビジネスが成り立たないからです。また、料理が上手ければ、後継者は他のスタッフからも一定の信頼を得られます。

同じようにして店舗を増やしていき、5店舗になったとします。こうなると5店舗をまとめるマネージャーが必要になります。ではこの時、誰をそのマネージャーに引き上げるでしょうか?

職人技で成り上がってきた社長がやりがちなのが、5店舗の店長の中から最も料理が上手い人を選ぶ、ということです。これは実は間違いです。ここでのマネージャーというのは、兵の将ではなく、将の将になります。先ほどの故事で武力があるからと言って将の将になれるわけではないのと同じく、料理の腕が良いからと言って、店長の上司になることはできません。

 

マネージャーにすべきなのは、5人の店長の中で、最も人徳がある人物で、店長たちをまとめられる人物です。「マネージャーが一番腕が良くなければ、スタッフの信頼が得られない」と思うかも知れません。そんなことはないのです。スタッフが日々接するのは店長であり、店長から料理を学ぶのです。マネージャーの役割は、「店長たちをチームとしてまとめ、会社の目標に向かわせること」です。

お分かりのとおり、社長の後継者たる人物は、ほとんどの場合、兵の将ではなく、将の将となります。この点を間違っていると、育成方法、そして抜擢の基準も間違ってしまいます。

管理職の上司である後継者には、自分が体験してきた分野の専門能力だけではなく、人格、いわゆる器が必要なのです。

社長(経営者)の器とは何かを完全解説

 

⑤後継者に志が無い

後継者は、先代社長の志を継ぐことになりますが、それは後継者自身には志が無くてもいい、ということではもちろんありません。先代社長の志を次ながらも、「自分はこうしたいという志」も必要です。

ここでフリーメイソンの話を引用してみましょう。

フリーメイソンの起源は、宗教施設などを作る石工職人たちの職業組合だったとされています。彼らが仕事をするにあたって、秩序を保てるよう、職人たちの成長システムが作られたそうです。

それが徒弟(見習い)、匠(熟練工)、棟梁(真の熟練工)の3段階です。

徒弟(見習い)に求められること

一段階目は、徒弟。彼らに求められることは、会社のビジョンに誠実であること、仕事の内容に誠実であること、会社のルールに誠実であること。彼らはまず”自分の夢”を実現するために働きます。

匠(熟練工)に求められること

二段階目は、匠。匠に求められることは、更に上の段階に成長するという「希望」で仕事をすること。彼らは周りに影響を与え、”私たちの夢”を実現するために働きます。

棟梁(真の熟練工)に求められること

三段階目は、棟梁。棟梁に求められることは、仕事の技術を慈愛の心で他の者たちに教えるために仕事をすること。彼らは後継者を育て、”次世代のための夢”を実現するために働きます。自分がこうなりたいということではなく、次世代へ託したい夢、これを志と言います。

実はこの3つのステップ、先ほどの将の将たるものは、の話に通じます。

徒弟は”兵”であり、一般社員。匠は”兵の将”であり一般社員の上司。棟梁は”将の将”であり管理職の上司。ということになります。図にまとめるとこんな感じです。



中国の故事からも、フリーメイソンの話からも共通して言えるのは、役職が上になればなるほど、他の人や社会のために働くことが求められるのです。そして、その姿勢が人徳や人格へとつながっていきます。後継者を選ぶ際には、その人が将の将たる考えや志を持っているかどうかが大切です。

 

後継者育成方法はコレ

以上、後継者の育成がうまく行かない理由をご紹介しました。次に、後継者育成方法をまとめてみます。

理念の明文化と共有

後継者は何より現在の社長と理念を共有していることが大切です。先ほど言ったMy Dreamだけで働いている人を後継者にすることはできません。会社の存在意義や目的、ビジョン、そして価値観(コアバリュー)を共有していることが大切です。これらの理念体系が明文化されていない場合には、まずはそこから取り組む必要があるでしょう。

社長の仕事を分解して引き継ぐ

社長の座を譲る前に、社長の仕事を分解することも必要かも知れません。特に創業社長の場合、スーパーマンですから、社内のあらゆる業務を自分で行っている可能性があります。それらを一人の後継者に引き継ぐのは無理があります。そこで、社長の仕事を分解し、組織的に分業していく必要があります。

求められる資質の明示と仕組み化

求められる資質を明示、明文化することも大切です。先ほど兵の将と将の将の違いを紹介しました。これを理解しているのが社長だけではダメです。マネージャーに昇格するのがどういう条件なのかを全スタッフが理解していなければ、なんであいつが?という不満が出ます。ですから、店長に求められるのはこういうこと、マネージャーに求められるのはこういうこと、後継者に求められるのはこういうこと、というように明文化し、社内に周知しておくことが大切です。出来ればそれを研修内容や評価項目に入れるなど、仕組みにするのが理想です。

経験の場を作る

後継者のようなリーダーが育つためには、経験:薫陶:研修=7:2:1という割合が必要だとされています。後継者育成塾やプログラムが実態としてあまり役に立っていない理由がここにも表れています。研修というのは1割でしかないのです。大部分を占めるのは経験です。そしてここでいう経験も、単に長年勤めていればいいわけではありません。次に挙げるようないわゆる一皮むける経験が必要です。(リストは金井壽宏氏の書籍からの一部引用)

  • 何もないところから何かを作り上げる
  • 失敗している事業を立て直す
  • 管理する人数、職域の増加
  • ライン業務からスタッフへの移動
  • ロールモデルの観察
  • 事業の失敗
  • 部下との対峙
  • キャリアチェンジ
  • 個人的なトラウマ

こういった経験をさせるために、大企業の場合には子会社を作り、そこの社長を後継者候補にやらせることで社長を育てる仕組みがあります。中小企業の場合にはそれは難しいですが、新規事業を立ち上げるとか、難しい仕事をさせるとか、実ビジネスでの経験を積ませる必要があります。

経営チームをつくり、スムーズに引き継ぐ体制を作る

経営チームとは、その名の通り、経営をチームで行うことです。社長一人に依存する経営よりも客観的に判断が出来るようになり、かつ後継者の負担も減ります。経営チームを上手く活用することで、スムーズに経営の引継ぎが出来るようになります。

経営チームのつくり方

先代社長が後継社長を支援する体制を作る

経営チームと並んで活用したいのが、会長職と社長の役割分担です。日常的な業務は社長に任せるものの、メンター役、コーチ役として会長が存在することで、安心して任せるようにできます。

一方、先代社長が会長に勇退する場合には、その役割分担を明確化しておくことが極めて大切です。これについては以下で解説していますので、合わせてご参照ください。

会長と社長の役割の違いとは?

(家族経営の場合)家族経営独特の問題に対処する

日本企業の多く、世界で見ても長寿企業の多くは家族経営です。家族経営は、多くの強みがある一方、構造的に問題が起こりやすい状態にあります。後継者育成に当たり、単に後継者の業務上の問題に対処するだけではなく、家族経営であるが故の問題にも対処することが大切です。

これについては以下の動画で詳しく解説していますので、合わせてご参照ください。

 

後継者は「経営の実践の場」でのみ育成できる

これまで見てきたように、後継者育成は一般社員の育成とは異なりますし、後継者育成塾やプログラムに参加させて何とかなるものではありません。何よりも経営の実践の場で修羅場や困難を乗り超えること。そして、乗り越えるだけの志が必要です。

我々の提供する仕組み経営では、経営者の方が後継者候補の方と一緒に会社の仕組みづくり(理念の明文化から各業務のマニュアル化まで)に取り組みます。それによって、自然と社長と理念共有が出来、経営者目線での仕事を経験しながら、かつ会社の仕組み化も出来る、という後継者育成には非常に効果的な内容になっています。

後継者育成にご関心がある方は、ぜひ以下から体験ウェブセミナーをご活用ください。



 

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